東京為替見通し=ドル円、米8月雇用統計のネガティブサプライズ警戒で上値が重い展開か

 5日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、8月ADP全米雇用報告が予想を下回ったことで142.85円まで下落後、8月米総合・サービス部門PMI改定値や8月米ISM非製造業景況指数が予想を上回ったことで144.23円まで反発したものの、米長期金利の低下で143.20円付近まで下押しした。ユーロドルは低調な米雇用指標を受けて1.1120ドルまで上昇後、予想を上回る米ISM非製造業指数などで1.1076ドル付近まで下押しした。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、今夜発表される米8月雇用統計のネガティブサプライズへの警戒感から上値が重い展開が予想される。

 米8月雇用統計は、失業率が4.2%と予想されており、7月の4.3%から低下、非農業部門雇用者数は前月比+16.0万人と予想されており、7月の同比+11.4万人からの増加が見込まれている。7月の雇用統計は、統計調査の週(7月12日週)の自動車工場の一時閉鎖やハリケーン「ベリル」の影響でテキサス州やルイジアナ州で停電があり、予想を下回る雇用増(+11.4万人)につながった可能性が指摘されていた。家計調査(失業率4.3%)によると、7月は悪天候のため43万6000人が出勤できなかった。

 米8月の雇用関連指標は以下の通りにやや悪化しており、ネガティブサプライズへの警戒感を高めている。
         【8月】     【7月】(〇改善・●悪化)
【改善】
〇ISM製造業雇用指数:46.0      43.3
〇新規失業保険申請件数(8/12週):23.3万件 24.3万件
【悪化】
●ISM非製造業雇用指数:50.2      51.1
●ADP全国雇用者数:+9.9万人    +11.1万人
●失業保険継続受給者数(8/12週):186.0万人 184.4万人
●チャレンジャー人員削減予定数:7万5891人  2万5885人
●消費者信頼感指数(雇用):16.4%   17.1%(※職が十分-雇用が困難)

 米8月雇用統計が予想通りに労働市場の改善を示していた場合は、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ幅予想は0.25%のままとなり、ドルは下げ渋る展開、予想外に悪化していた場合は0.50%の利下げ幅が見込まれるため、ドル売り要因になる。

 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」は、9月FOMCで0.25%の利下げ(※FF金利:5.00-25%)が開始され、11月FOMCでは0.50%利下げ(※FF金利:4.50-75%)、12月FOMCでは0.25%の利下げ(※FF金利:4.25-50%)が見込まれている。

 8月21日に発表された年次ベンチマーク改定の速報値では、2023年4月から2024年3月までの1年間の雇用者増は81万8000人下方修正されることが示された。改定前の雇用者数は1年間に290万人増(月平均で24万2000人増)だったが、今回の改定を受けて、1カ月当たり約17万4000人増のペースとなった。2024年4月から7月までの月平均は前月比+15.4万人となり、3月までの平均である+17.4万人や8月の予想の+16.0万人とほぼ同じになっている。

 8月の非農業部門雇用者数が予想を上回る数字であっても、WSJ紙がNFPは過大評価の可能性と指摘していることや今回の下方修正(▲81.8万人)を受けて、ドル買いでの反応は限定的だと思われる。

 米国の雇用統計では、家計調査に基づく失業率よりも、事業所調査に基づく非農業部門雇用者数が重視される傾向にあったが、今後は、4%台で推移している失業率が労働市場の実態を反映する数字として重視されるのかもしれないことで、8月失業率が上昇していた場合は、9月FOMCでの利下げ幅は0.50%になる可能性が高まることになる。

 NFPは、「起業・廃業モデル」で過大評価している可能性が指摘されていること、賃金をベースにカウントしていることで複数の職を持つ者が数字を押し上げている可能性があることが指摘されている。

(山下)
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