東京為替見通し=ドル円、神経質な動きに ドル売りトレンドも日銀の時間的余裕が支え

 昨日の海外市場でのドル円は144.84円と4日以来の高値を付けた。米長期金利の上昇とともに全般ドル買いが加速したことや、月末・四半期末が近づく中、ロンドン16時(日本時間24時)のフィキシングに絡んだドル買いのフローが観測された。ユーロドルも米長期金利の上昇に伴うユーロ売り・ドル買いが強まると1.1122ドルまで弱含んだ。

 本日のドル円も神経質な動きになりそうだ。昨日は対ドルでユーロが昨年7月以来、ポンドが2022年3月以来、豪ドルが昨年2月以来の水準まで上昇した。欧州圏からは連日、弱い経済指標(9月の各購買担当者景気指数=PMI、独Ifo企業景況感指数など)が発表されているにもかかわらず、ユーロ売り・ドル買いは限定的だった。また多くのアジア通貨も年初来高値(ドルの年初来安値)を更新し、ドルの軟調地合いが継続している。

 昨日のNY時間では米金利の上昇に支えられドルはやや調整の買い戻しが進んだ。しかしながら先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長をはじめとするFRB高官の発言から利下げへの加速感がやや薄れてきているものの、ドル売りトレンドが強い。方や、多くの中央銀行が利下げの道を探っている中、依然として日銀は緩やかなペースではあるが利上げを模索している状況だ。今後、円だけが独歩安になるのも難しいと思われ、ドル円も上値が限られるのではないか。

 一方、日銀に対して過度に高まっていた利上げ期待の巻き戻しがドル円の下値を支えている。昨日発表された本邦の8月消費者物価指数(CPI)の基調的なインフレ率を捕捉するための指標は、刈込平均値が前月と変わらず1.8%、加重中央値1.1%から0.7%へ低下、最頻値が1.5%から1.3%へ低下し、いずれも2%を下回る結果となった。基調インフレの伸び悩みから、植田日銀総裁が先日述べたように、日銀は「時間的な余裕」をもって政策金利を判断するだろう。そうなるとドル売りトレンドが変わらない場合でも、対円ではやや緩やかなドル売りとなりそうだ。

 本日は本邦を含めアジア・オセアニア国などからは市場を動意づけるような主だった経済指標の発表が予定されていない。よって、本日のアジア時間は連日続伸している中国株式市場の動向や、本邦の実需勢の動きに左右されることになるだろう。本日は通貨の受け渡しが月末日となるスポ末・期末応当日ということもあり、日英のフィキシングなどでは通常以上に神経質な動きになる可能性がある。

 アジア時間はイベントが少ないものの、NY時間にはパウエルFRB議長を含め多くのFRB要人の講演や、米国の雇用指標、GDP/PCE確定値等の発表が予定される。よって、市場の流れを主導するのはNY時間の動きになりそうだ。なお、パウエルFRB議長は米国債市場カンファレンスでの挨拶であり、その原稿はFRBのホームページ等で公表される予定。質疑応答は行われない。

(松井)
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