東京為替見通し=「これ以上ない結果」の米雇用統計、ドル円は買い場探しか

 昨日の海外市場でのドル円は米長期金利の急上昇とともに円売り・ドル買いが広がり、一時149.00円と約1カ月半ぶりの高値を付けた。9月米雇用統計でが予想よりも強い結果となり、市場では米連邦準備理事会(FRB)の利下げペースが想定より遅くなるとの見方が強まった。ユーロドルは1.0951ドルと8月15日以来の安値を更新した。

 本日のドル円は引き続き買い場探しとなるか。先週発表された9月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数増減、失業率ともに好結果となった。また、前月分の非農業部門雇用者数も上方修正されている。結果発表後にテレビのインタビューに応えたグールズビー米シカゴ連銀総裁は「雇用統計はこれ以上ない結果だ」と述べている。

 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、11月6-7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50%の利下げを予想する確率は前日の32.1%から0%になった。一方で0.25%の利下げは93.4%、そしてこれまで0%だった据え置き予想も6.6%まで上昇している。雇用統計の発表後にドル円は2円超も急騰。市場の反応があまりにも急激だったことで多少の調整も入りやすいだろうが、ドル円は買い場を探す展開になると予想する。

 リスク要因としては、変節を繰り返す石破首相の動向か。先週の円売りのきっかけは、それまで日銀の引き締め姿勢を容認していた石破首相が一転、「現在は追加利上げをするような環境にはない」との見解を示したこと。市場では、総選挙に向けて株式市場の買い支えを狙った変節と噂されている。ただし首相は、円安が急に進んだことを指摘された場合、円安への不快感を示す可能性もある。

 なお石破氏は、自民党総裁に決まり1週間も経たないうちに様々は約束を反故にしてきている。そのため、総選挙で自民党の大幅な議席減などの懸念が高まった場合には、円相場は再び大きく荒れる可能性もあるだろう。

 本日は、日銀地域経済報告(通称・さくらレポート)が発表される。本来ならば各地域の景気判断に注目が集まるが、先週の石破首相と植田日銀総裁との会談で、日銀は「早急な利上げを行わないよう」にくぎを刺されていると思われ、どのような景気判断が出ようが日銀は当面、政策金利等の変更を行うことは難しいだろう。一部では中央銀行の独立性が確保されていることで、景気判断や経済指標の結果により政府の介入を受けないとの認識もある。しかし、実際には日銀法第4条で「常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」と定められており、少なくとも総選挙が終わる前は石破首相の要望通りに動くことになりそうだ。
 
 また、引き続き中東情勢の動きには警戒を怠らないようにしたい。先週1週間で原油先物は約9%上昇している。国連が全く機能せず、G7各国はイスラエルが繰り返す非人道的な攻撃に対しても親イスラエル姿勢を崩すことがなく、今後も中東情勢の悪化が予想される。戦火がさらに拡大した場合には、リスク回避の動きに急変するリスクがあることも念頭に入れておきたい。

(松井)
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