東京為替見通し=ドル円、衆院選での自公過半数割れを受けて神経質な展開か

 25日のニューヨーク外国為替市場でドル円は152.38円まで上昇。9月米耐久財受注額や10月米ミシガン大学消費者態度指数確報値が予想を上回り、米10年債利回りが4.24%台まで上昇したことに後押しされた。ユーロドルは1.0793ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、衆議院選挙で自民党・公明党が過半数(233議席)を維持できなかったことで円売り圧力が先行すると予想される。
 
 しかしながら、日本は対外債権大国であり、経常収支黒字国であることから、リスク回避の円買いの可能性にも警戒しておきたい。
 
 早朝のオセアニア市場のドル円は、東京市場での日本売り(日本株売り・円売り)への警戒感から、153.27円まで上昇して、23日の高値153.19円を上回った。ドル円のテクニカル面での重要な水準は、161.95円から139.58円までの下落幅の61.8%戻しである153.40円にある。
 さらに、ドル円が155円台方向へ上昇した場合、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性にも警戒しておきたい。

 一方で、11月5日の米国大統領・議会選挙において、トランプ共和党候補、ハリス民主党候補のどちらが勝利しても、両者が減税と拡張的な財政政策を公約に掲げているため、米長期金利の上昇基調が続き、ドルは底堅い展開が予想される。

 特にトランプ第47代米大統領が誕生した場合の「トランプノミクス2」では、関税引き上げや減税と財政出動によるトランプ・フレーションの可能性が高いため、トランプ・トレード(米国債売り・ドル買い)が活発化しつつある。

 先週末の主要20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議閉会後に、植田日銀総裁は、「不確実性が大きい場合には、政策変更を慎重に段階的に進めたい。追加利上げを判断するのに、時間的な余裕はある」と述べ、追加利上げを急がない考えを示した。そして政治情勢の不透明感により、利上げは来年に先送りされる可能性が高まっていることは円売り要因となる。

 自民党(公示前247議席⇒191議席)、公明党(32議席⇒24議席)で215議席(公示前279議席)となり、過半数(233議席)の議席を確保できなかったため、野党の一部との連立を模索することになる。しかしながら、日本維新の会や国民民主党は連立参加に否定的な姿勢を示しており、衆院で過半数の議席を持たない少数与党内閣となるため、政治不安がかなり強まることになる。今後は、自民党内での石破降ろしと総裁選の可能性、野党が内閣不信任案を提出して内閣総辞職の可能性など、政治情勢の混迷が警戒されることになる。

 立憲民主党が中核となる連立政権が誕生した場合、立憲民主党は日本銀行の金融政策正常化を支持しており、早期の追加利上げが進むとの観測から円買い要因となることは、念頭に置いておきたい。

 中東情勢に関しては、26日にイスラエルがイランに通告した上で、約20カ所の軍事施設にミサイル攻撃を断行した。懸念されていた石油及び核施設ではなく、軍事施設の攻撃に留まり、予め攻撃を通告して反撃しないように釘をさしていた、と報じられており、今後のイランの出方に要警戒となる。


(山下)
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