東京為替見通し=ドル円、トランプ・トレードが下値を支える底堅い展開か

 8日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが4.26%台まで低下したことで152.14円まで下落したものの、米10年債利回りが4.31%台まで低下幅を縮めたことで下げ渋る展開となった。ユーロドルは欧州株相場の下落を背景にリスク・オフのユーロ売り・ドル買いが出たことなどで、1.0797ドル付近から1.0687ドルまで値を下げた。ユーロ円は独連立政権崩壊でユーロ圏景気への懸念が意識されたことで163.21円まで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、トランプ・トレード(米国債売り・ドル買い)により底堅い展開が予想されるものの、上値は米10年債利回りの低下や今週発表される米10月消費者物価指数(CPI)などへの警戒感から限定的だと思われる。

 本日の上値の目安としては、日足一目均衡表・転換線の153.01円付近、下値の目安としては200日移動平均線の151.70円付近を念頭に置いておきたい。

 8時50分に発表される日銀金融政策決定会合における主な意見(10月30-31日分)では、石破政権下での追加利上げに関する見解に注目しておきたい。

 特別国会での首相指名選挙では、国民民主党が玉木代表に投じると表明しているため、第2次石破内閣が誕生する可能性が高まっている。来年7月の参議院選挙に向けて、与野党の攻防が続いていくことになる。

 第1次トランプ政権では、パウエルFRB議長に対して利下げ圧力をかけ、米国の製造業保護のために高い関税という防波堤を設けながら、ドル安を志向していた。
 第2次トランプ政権でも、発言権を求めている米連邦準備理事会(FRB)に対しては利下げ圧力を加え、高関税(対中国60%、その他10-20%)とドル安を志向すると思われる。
 
 FRBへの利下げ圧力に関しては、パウエルFRB議長はインフレ伸び率の鈍化傾向と労働市場の緩和傾向を背景に、利下げ路線を邁進中であり、第2次トランプ政権による利下げ要請と整合的だと思われる。
 米10月CPIがインフレ鈍化を示していた場合、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の追加利下げ確率が高まることで、ドル円の上値を抑える要因となる。

 懸念材料としては、第2次トランプ政権で関税引き上げ、減税と大規模な財政出動、移民規制などの公約が実現された場合、物価上昇圧力(トランプ・フレーション)が高まるため、FRBの来年以降の中立金利水準を目指した利下げ路線の障害となる可能性が挙げられる。
 パウエルFRB議長は、今後の金融政策は「データ」次第と述べてきているが、来年以降は「政策」次第となっていくのかもしれない。

 トランプ次期米大統領は、第1次トランプ政権でもドル高をけん制していたが、今年4月にも、ドルが対円で34年ぶりの高値を付けたことに関して、米国の製造業にとって「大惨事だ」と述べていた。
 トランプ次期米大統領は、第1次トランプ政権で通商代表部(USTR)の代表を務めたライトハイザー氏に再登板を要請した、と報じられている。ライトハイザー氏は第1次トランプ政権で日米貿易協定の交渉を主導するなど、対日強硬派として知られており、1980年代のレーガン政権のUSTR次席代表として、日本に対して鉄鋼輸出の自主規制を受け入れさせた。

 第2次トランプ政権が、「米国第一主義」を実現させる手段として、関税引き上げと並行して、対人民元、対円でのドル安誘導「プラザ合意2」に踏み切る可能性には警戒しておきたい。一方で、本邦通貨当局にとっては、ドル売り・円買い介入に難色を示してきたイエレン米財務長官が退任し、ドル安を志向する第2次トランプ政権の誕生は好都合なのかもしれない。


(山下)
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