東京為替見通し=ドル円、パウエルFRB議長発言でトランプ・トレード継続か

 14日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、10月米卸売物価指数(PPI)が予想を上回り、前週分の米新規失業保険申請件数が予想より強い内容となり、パウエルFRB議長が「堅調な米景気を踏まえれば、利下げを急ぐ必要はない」と述べたことなどで156.42円まで上昇した。ユーロドルは、デギンドスECB副総裁発言で1.0497ドルまで下落後、1.0582ドルまで反発、パウエルFRB議長発言で1.0512ドル付近まで下押しした。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、パウエルFRB議長発言「利下げ急ぐ必要ない」を受けてトランプ・トレード(米国債売り・ドル買い)の継続が予想されるものの、引き続き本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性には警戒しておきたい。

 パウエルFRB議長の発言を受けて、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、12月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%の利下げ確率は80%台から60%台へ低下、据え置き確率は20%前後から40%弱まで上昇している。

 パウエルFRB議長は、9月FOMCでの第1次利下げ(▲0.50%)の後の記者会見で、金融政策の再調整「リキャリブレーション(recalibration)」という単語を10回程度発していたが、今回は1回しか確認できず、利下げサイクルの一時停止の意図が示された。

 かつて、2016年12月のFOMCでは、イエレン第15代FRB議長やパウエルFRB理事は、トランプ第45代大統領の経済政策(減税や輸入関税)への対応策として、インフレ抑制のために金利をより高くする必要があるかもしれないとの結論に達していた。2024年12月のFOMCでは、パウエルFRB議長は、トランプ第47代大統領の経済政策(減税や輸入関税)への対応策を協議せざるを得ない状況に追い込まれつつあるのかもしれない。

 一方、パウエルFRB議長は「経済が弱まれば利下げの余地は大きい。データで利下げ減速可能になるなら正しい行動のように思える」とも述べており、12月FOMCの前の12月6日に発表される米11月雇用統計まで予断を許さない状況が続くことになる。

 ドル円は、トランプ・トレードの継続により156.42円まで上昇し、神田前財務官が退任前に円買い介入を断行した水準(157円台、159円台、160円台、161円台)に接近しており、本日も本邦通貨当局による円買い介入の可能性には警戒しておきたい。

 8時50分に発表される7-9月期GDP速報値は前期比年率+0.7%と予想されており、物価高を受けた消費の伸び悩みなどにより、4-6月期の同比+2.9%からの成長鈍化が見込まれている。しかし、1-3月期のマイナス成長から2四半期連続のプラス成長となっていることは、現状の円安基調や第2次トランプ米政権でのインフレ懸念などから、12月日銀金融政策決定会合での追加利上げの可能性を残すことになる。

 11時に発表される10月中国鉱工業生産は前年比+5.6%と予想されており、9月の同比+5.4%から改善が見込まれ、中国小売売上高は同比+3.8%と予想されており、9月の同比+3.2%からの改善が見込まれている。先日の全人代常務委員会で公表された財政出動は、景気対策が力不足だったが、来年は第2次米中貿易戦争という難題が控えているため、中国経済の減速懸念が高まりつつある。中国人民元、さらに豪ドルや円の売り要因となりうるネガティブサプライズには警戒しておきたい。


(山下)
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