東京為替見通し=ドル円、ウクライナ情勢関連のヘッドラインに要警戒か

 19日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、ロンドン市場でロシアとウクライナを巡る地政学リスク回避の円買いで153.29円まで下落。もっともその後、ラブロフ露外相発言「核戦争が起きないというのがロシアの立場だ」を受けて154.80円まで反発した。ユーロドルは1.0524ドルから1.0601ドルまで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米長期金利の低下が上値を抑える中、ウクライナ情勢を巡る関連ヘッドラインに警戒していく展開が予想される。

 ドル円は、プーチン露大統領が核ドクトリンの改定を承認し、核兵器の使用基準を緩和した、との報道で153.29円まで急落。しかしながら、ラブロフ露外相が「核戦争が起きないというのがロシアの立場だ」と発言したことで154円台後半まで反発している。17日にバイデン米政権が、ウクライナによるロシア領内への攻撃を巡り「米国製の長距離兵器の使用を許可した」と報じられたが、19日にはプーチン露大統領が核ドクトリンの改定を承認して、「核兵器の使用基準を緩和した」と報じられた。

 ロシア与党「統一ロシア」のマリア・ブティナ議員は、「バイデン米大統領がウクライナに米国製兵器を使用してロシア領内を攻撃することを容認すれば、第3次世界大戦を引き起こすリスクがある」と警告していた。ロシアの「核抑止力の国家政策指針」(核ドクトリン)は、核兵器使用の条件として、通常兵器によってロシアが侵略され国家の存立が危機的になった時、としており、使用基準の緩和によりウクライナ戦争で戦術核が使用される可能性が高まりつつある。

 今後もウクライナやロシア関連のヘッドラインには警戒しておきたい。

 8時50分に発表される10月貿易統計(通関ベース、予想:季節調整前3604億円の赤字、季節調整済1467億円の赤字)では、日本の実需筋の円売り圧力を見極めることになる。

 第2次トランプ米政権では、米国の製造業保護のために、輸入関税が引き上げられ(公約:中国60%、その他10-20%)、ドル安志向が警戒されているため、対米貿易黒字にも注視しておきたい。日本の1-9月の貿易赤字は4兆8738億円だが、対米貿易黒字は6兆1701億円となっており、米為替報告書で監視対象国に入っている要因となっている。

 参考までに、新NISA稼働に伴う「家計の円売り」である投信の買い越し額は、1-10月で10兆1045億円に達しており、貿易赤字とともに、ドル円の下値を支える要因となっている。

 なお、今年4月にトランプ氏は、ドル円が34年ぶりの高値圏となる154円台に上昇してきた時に、「米国の製造業にとって大惨事だ」とSNSに投稿していた。これまでの所、トランプ氏は、第1次トランプ米政権の時のようなSNSへの投稿は控え気味だが、4月の時のように、ドル高・円安への牽制発言が発せられた場合、トランプ・トレード(米国債売り・ドル買い)の巻き戻しを誘発することになる。

(山下)
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