東京為替見通し=ドル円、ウクライナ情勢と植田日銀総裁の講演内容に要注目か
20日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、「ウクライナ軍はロシア領内の軍事目標に対し、英国製の長距離ミサイルを初めて発射した」という報道を受けて155.89円から一時155.06円付近まで失速した。ユーロドルは、米10年債利回りが4.43%台まで上昇し、ウクライナの地政学リスク警戒から1.0507ドルまで値を下げた。ユーロ円は一時163.17円まで下落するも、ドル円の上昇を支えに前日とほぼ同水準の163円後半で引けた。
本日の東京外国為替市場のドル円は、ウクライナ情勢を巡る関連ヘッドラインに警戒しながら、植田日銀総裁の講演に注目する展開が予想される。
ウクライナ軍は19日に米国製地対地ミサイル「ATACMS」でロシア領を攻撃したが、昨日は英国製長距離ミサイル「ストームシャドー」でロシア領内の軍事施設を攻撃したと報じられている。プーチン露大統領が「核ドクトリン」を修正して、戦術核使用のハードルを下げているため、本日も関連ヘッドラインに警戒しておきたい。これまでは、核兵器を保有する国から攻撃された場合にのみ核兵器で対抗するとしていたが、ウクライナが核保有国である欧米諸国から供与されたミサイルをロシアに対して使用した場合、共同攻撃と見なして核攻撃の引き金となる可能性があると警告している。
本日は14時過ぎから植田日銀総裁が、パリ・ユーロプラス「ファイナンシャル・フォーラム」で講演することが予定されており、内容や質疑応答に注目することになる。18日の金融経済懇談会での講演や記者会見では、12月18-19日の日銀金融政策決定会合での追加利上げに関する明確な言及はなく「各会合で適切な判断をする」という曖昧な表現に留まった。本日の講演や質疑応答では18日と同様の曖昧な内容をメインシナリオにして、過去の植田ショックの再現をリスクシナリオとして警戒しておきたい。
植田総裁によるこれまでの相場変動要因となった発言は以下の通りとなる。
・2023年12月7日「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」※円高
・2024年4月26日「足元の円安が物価に与える影響は従来ほどには大きくない」※円安
・2024年7月31日「0.5%が壁になるとは認識していない」※円高
・2024年10月2日「時間は十分ある」※円安
・2024年10月31日「『時間的な余裕がある』は今後使わない」※円高
12月会合での利上げには言及していないが、可能性を示唆する見解は以下の通りとなる。植田総裁は「経済・物価が足元で見通し通りに進捗して見通しが実現する確度がある程度高まるという自信が得られれば次のステップに移る」と述べていた。そして、段階的な利上げが長期的な経済成長を支え、物価安定目標を持続的かつ安定的に実現していくうえで有効と述べ、実質金利水準のマイナス幅に言及し、ビハインド・ザ・カーブに陥らないように判断するとも述べていた。
植田総裁が判断材料に挙げている「経済・物価・金融情勢」も確認しておきたい。現在のドル円の水準(※155円台)は、7月31日の利上げの時の高値153.88円を上回っている。植田総裁が「第1の力」と注視する10月輸入物価指数は前月比+3.0%で、22年9月(+5.3%)以来の高い伸びを記録していた。国内総生産(GDP)は2四半期連続でプラス成長を記録している。
スワップ市場のOIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)市場における追加利上げの確率は50%程度になっている。
(山下)
本日の東京外国為替市場のドル円は、ウクライナ情勢を巡る関連ヘッドラインに警戒しながら、植田日銀総裁の講演に注目する展開が予想される。
ウクライナ軍は19日に米国製地対地ミサイル「ATACMS」でロシア領を攻撃したが、昨日は英国製長距離ミサイル「ストームシャドー」でロシア領内の軍事施設を攻撃したと報じられている。プーチン露大統領が「核ドクトリン」を修正して、戦術核使用のハードルを下げているため、本日も関連ヘッドラインに警戒しておきたい。これまでは、核兵器を保有する国から攻撃された場合にのみ核兵器で対抗するとしていたが、ウクライナが核保有国である欧米諸国から供与されたミサイルをロシアに対して使用した場合、共同攻撃と見なして核攻撃の引き金となる可能性があると警告している。
本日は14時過ぎから植田日銀総裁が、パリ・ユーロプラス「ファイナンシャル・フォーラム」で講演することが予定されており、内容や質疑応答に注目することになる。18日の金融経済懇談会での講演や記者会見では、12月18-19日の日銀金融政策決定会合での追加利上げに関する明確な言及はなく「各会合で適切な判断をする」という曖昧な表現に留まった。本日の講演や質疑応答では18日と同様の曖昧な内容をメインシナリオにして、過去の植田ショックの再現をリスクシナリオとして警戒しておきたい。
植田総裁によるこれまでの相場変動要因となった発言は以下の通りとなる。
・2023年12月7日「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」※円高
・2024年4月26日「足元の円安が物価に与える影響は従来ほどには大きくない」※円安
・2024年7月31日「0.5%が壁になるとは認識していない」※円高
・2024年10月2日「時間は十分ある」※円安
・2024年10月31日「『時間的な余裕がある』は今後使わない」※円高
12月会合での利上げには言及していないが、可能性を示唆する見解は以下の通りとなる。植田総裁は「経済・物価が足元で見通し通りに進捗して見通しが実現する確度がある程度高まるという自信が得られれば次のステップに移る」と述べていた。そして、段階的な利上げが長期的な経済成長を支え、物価安定目標を持続的かつ安定的に実現していくうえで有効と述べ、実質金利水準のマイナス幅に言及し、ビハインド・ザ・カーブに陥らないように判断するとも述べていた。
植田総裁が判断材料に挙げている「経済・物価・金融情勢」も確認しておきたい。現在のドル円の水準(※155円台)は、7月31日の利上げの時の高値153.88円を上回っている。植田総裁が「第1の力」と注視する10月輸入物価指数は前月比+3.0%で、22年9月(+5.3%)以来の高い伸びを記録していた。国内総生産(GDP)は2四半期連続でプラス成長を記録している。
スワップ市場のOIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)市場における追加利上げの確率は50%程度になっている。
(山下)