東京為替見通し=円は観測記事で右往左往、人民元基準値やハト派中村審議委員の発言に注目

 昨日の海外市場でドル円は、日銀の早期利上げ観測後退を背景にした買いが続き、151.23円まで上昇。一時150.00円付近まで売りに押される場面もあったが、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長から「米国経済は現在、驚くほど良好な状態」「経済と金融政策の現状に非常に満足」との発言が伝わると買い戻しの動きに。米国株が引けにかけて上げ幅を拡大したことも支えとなり150.60円台まで持ち直した。ユーロドルは、1.04ドル後半から1.05ドル半ばで方向感なく動いた。仏議会は内閣不信任案の採決を行い可決されたが、市場の値動きは限定的だった。

 本日の東京時間のドル円は、150円台でもみ合いとなるか。ここ最近は、本邦実需勢がドル円を買い、欧米系がドル円を売っていることで、アジア時間ではドル買いが優勢になり、欧米入り後はドル売りの勢いが強くなっている。

 昨日はムサレム米セントルイス連銀総裁やパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言の影響でドルが支えられたが、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、12月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%の利下げ確率は8割弱で小幅に利下げ予想が増え、据え置き予想が2割超となった。一方で1月28-29日の据え置き予想が61%台から64%台へとやや拡大した。市場では、これまで通り12月FOMCでの利下げ以後は、当面様子見となる見通しになっている。市場の予想にさほど変化がなかったのは、1月には第2次トランプ政権が樹立していることで、トランプトレードによる金利上昇をすでに織り込んでいたからとも思われる。
 
 FOMCが12月を最後に利下げ停止との予想に変化があまりない中で、12月の日銀の動向への注目度が増している。昨日も一部通信社が「12月は政策を維持」との観測記事が英訳されただけで、円が売られている。これから週末を含め、18-19日の日銀政策決定会合まで様々な観測記事でドル円は神経質に動きそうだ。

 その中で、本日は10時半ころに中村日銀審議委員が広島県金融経済懇談会に出席し、挨拶を行うことで、この内容が注目される。中村審議委員は兼ねてからハト派とされ「賃金から物価への波及はまだ遠い」「実質賃金のプラス転換に加え、可処分所得の増加が必要」との見解を示している。実質賃金は過去最長のマイナスが6月にようやく終止符を打たれたが、プラスに転じたのは僅か2カ月のみで再びマイナスに戻り、8月には-0.8%、9月には-0.4%まで低下しているが、どのような見解を示すかを確かめたい。なお、10月の実質賃金は明日6日に公表予定。市場では同氏がハト派ということで、サプライズとしてはタカ派、もしくはさほどハト派寄りの発言にならない場合のほうが動意づくと予想されている。なお、同氏は明日にも記者会見が予定されている。

 ドル円以外では、人民元の値動きには引き続き注目。昨日は中国人民銀行が市場予想よりも大幅に元高に人民元取引の基準値を設定したことで元買い・ドル売りとなり、他通貨に対してもドルが売られた。本日も基準値の水準次第でドルが動意づくだろう。また、昨日は豪州の7-9月期の四半期国内総生産(GDP)が予想比を下振れ、豪州の中長期金利が低下し、豪ドルは対ドルで約4カ月ぶりの安値を更新した。来週9-10日に豪準備銀行(RBA)理事会が開かれることで、豪ドルも神経質な動きになりそうだ。


(松井)
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