週間為替展望(豪ドル/ZAR)-ZAR、トランプ米政権の圧力が重し

◆豪ドル、経済指標乏しく利下げ予想は変わらず
◆豪ドル、米中間の関税引き上げ合戦には警戒
◆ZAR、トランプ米政権の政治圧力が重しに

予想レンジ
豪ドル円 93.00-97.50円
南ア・ランド円 7.80-8.40円

2月10日週の展望
 豪ドルは上値の重い動きになりそうだ。17-18日に豪準備銀行(RBA)理事会が行われるが、10-12月期消費者物価指数(CPI)が大幅に低下したことにより、すでに25ベーシスポイントの利下げは織り込まれている。来週は国内からの経済指標は、11日に2月ウエストパック消費者信頼感、1月NAB企業信頼感・景況感が発表され、13日にはメルボルン・インスティテュートが2月の期待インフレを発表する程度に留まる。どの指標もCPIほどのインパクトを与える可能性は低く、利下げ圧力を翻すのは難しいだろう。

 国内の経済指標が乏しいことで、来週は豪州国内よりも引き続き米中間の関税引き上げ合戦を含めた国外要因が豪ドルを動意づけることになりそうだ。豪株指数のS&P/ASX200は今年に入り史上最高値を更新していたが、米中間の関税引き上げにより上値が重くなってきている。米国の対中関税引き上げが中国国内の景気を悪化させた場合、豪州の主要輸出商品である鉄鉱石や石炭、天然ガスなどの資源・エネルギーや、農産物の需要は縮小すると見られ、豪ドルの重しとなるだろう。中国への10%の追加関税はトランプ米大統領の当初公約(60%)と比較すると軽微となっているが、市場では追加関税や他の制裁が行われるかに注目が集まる。

 なお、隣国ニュージーランドからは13日にNZ政府が6カ月毎のファイナンシャル・ステートメントを発表し、同日にはNZ準備銀行(RBNZ)が第1四半期の2年先インフレ予想を公表する。

 南アフリカ・ランド(ZAR)は上値が重くなるだろう。今週に入りトランプ米政権による南アに対する圧力が急激に増している。アパルトヘイト時に白人入植者が南アの土地を搾取していたが、それらの土地の再分配を行う法案について、トランプ米政権が「あからさまに人種差別的な所有権法」と非難した。また、南アの白人農民に対して「大量虐殺が行われている」という根拠に乏しい説も広め、今月末ヨハネスブルグで行われるG20に米国務長官は不参加としている。

 更に、南アが台湾大使館を移転する決定を下したことについても、「南アは米国との関係を悪化させるためにあらゆる努力をしている」と米上院で非難されるなど、米国の圧力が強い。この問題を複雑化させているのは、国民統一政府(GNU)には白人支持層が多い第2党民主同盟(DA)が加わっていることだろう。DAがトランプ米政権の方針を支持することで、南アの政局がより混迷を深める可能性がある。これらの国内外の政治的な混迷は、当面ZARの上値の重しになりそうだ。

2月3日週の回顧
 豪ドルは対ドルではトランプ関税を受けて週初に大きく売り込まれたものの、その後は買い戻された。対円では、本邦の早期利上げ観測が高まったことが抑えになった。ZARは対円では軟調な動き。トランプ米大統領が「南アへの今後の資金拠出を全て打ち切る方針」を発表したことがきっかけで週初はZAR売りが進んだ。対ドルでは米金利低下で買い戻されたが、対円では上値が重かった。(了)
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