東京為替見通し=欧米間摩擦拡大の円買いもドル円の重しか、豪からは雇用統計発表

 昨日の海外市場でドル円は、ダウ平均が一時240ドル超下落し、ナイト・セッションの日経平均先物が420円下げたことも相場の重しとなり、一時151.25円と日通し安値を更新した。その後、米株が下げ渋ったため151.83円付近まで下げ幅を縮める場面があったが、FOMC議事要旨公表後に米長期金利が低下したことで再び下値を探る場面もあった。ユーロドルはウクライナ情勢を巡る不透明感がくすぶる中、一時1.0401ドルまで値を下げた。

 本日の東京時間でドル円は、米金利の低下や日銀の早期利上げ観測もあり上値が限られそうだ。もっとも、本日は5・10日(ゴトー日)で相応のドル買いが出る可能性があることや、明日に全国1月消費者物価指数(CPI)の発表を控えて、様子見ムードが広がるかもしれない。

 昨日の宮城県で行われた金融経済懇談会に出席した高田日銀審議委員は、2%の物価安定の目標に近づいているとの認識を示し、「過度な緩和継続期待が醸成され、物価上振れリスクや金融の過熱リスクが顕在化しないよう、1月に実施した追加利上げ以降も、ギアシフトを段階的に行っていくという視点も重要」とタカ派発言だった。

 ただし、高田審議委員はこれまでもタカ派的な発言を繰り返していたこともあり、想定の範囲内と受けとめられて円買いの勢いは限られた。ここから先の日銀の動向を占うのは、今後発表される経済指標や春闘の結果などで、ほかの審議委員がどの程度まで追加利上げへと傾くかが市場の注目となる。

 日米の金融政策以外では、欧州と米国の経済及び政治的な摩擦の拡大が顕著なことで、リスク回避的な動きで円が買われやすい地合いでもある。第1次政権時からトランプ米大統領は、北大西洋条約機構(NATO)の防衛費を巡る拠出金に不満を示し、欧州連合(EU)の通商政策に対しても強硬姿勢を見せていた。

 第2次トランプ政権が発足すると、ウクライナとロシアをめぐる停戦協議が、トランプ大統領が思い描いていたような簡単な合意には達することができないことで、ウクライナや欧州各国を排除してロシアとの交渉を進めようとしている。このため、欧州各国が強い懸念を表明し欧米間の摩擦が拡大している。

 トランプ大統領は昨日、ウクライナがロシアとの戦争を始めたと虚偽の非難をした。ウクライナのゼレンスキー大統領についても、「選挙のない独裁者」とロシアが主張していることを米国の大統領が追認するなど異常事態に陥っている。欧州と米国との溝は拡大する一方であり、和平交渉が進むのは難しいだけでなく、米露の接近により欧州リスクが再燃する可能性が高い。

 更に、23日にはドイツで議会選挙が実施される。こちらも結果次第で欧州の政治が再び混迷を深めるリスクもあり、ユーロの重しになるだけではなく、避難通貨としての円買い意欲も増えそうだ。

 円やユーロ以外では、本日は豪州から1月雇用統計が発表されるため豪ドルの動きにも注目。一昨日には豪準備銀行(RBA)、昨日はNZ準備銀行(RBNZ)とオセアニア国が相次いで政策金利を引き下げたが、声明文を含めてある程度織り込まれていたことで、市場が期待したほどの値動きにはならなかった。前回(昨年12月分)発表された豪州の失業率は4.0%と、RBAの四半期金融政策報告における2024年末見通し4.4%よりも好結果となった。先日のRBA理事会後にブロック総裁が「雇用市場の強さに驚いている」と発言したが、雇用情勢が引き続き強固だった場合にはRBAの追加利下げのペースが緩やかになる可能性もありそうだ。

(松井)
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