週間為替展望(ポンド/加ドル)-加ドル、関税発動が重し

◆ポンド、独自材料に乏しくドルや円に左右
◆加ドル、3月4日に米国の対カナダ関税発動で軟調か
◆加ドル、2月雇用統計に注目

予想レンジ
ポンド円 186.00-192.00円
加ドル円 102.00-106.00円

3月3日週の展望
 来週、英国内では2月製造業・サービス部門購買担当者景気指数(PMI)の発表が予定されているが、改定値の発表であるので注目度は低い。速報値は、製造業が46.4と予想外に1月から鈍化し約14カ月ぶりの低水準となった一方で、サービス部門は51.1と前月を上回った。目立ったイベントが見当たらず、ポンド自身は方向感が出にくい。ドルや円の動きに左右されやすいだろう。

 英国では低成長と高インフレが併存するスタグフレーション懸念が再燃しており、イングランド銀行(英中銀、BOE)はジレンマに陥っている。0.25%の利下げを決定した2月会合で0.50%の利下げを主張した金融政策委員会(MPC)のディングラ委員は、「メンバーが利下げのペースについて段階的という表現を用いることで一致しているものの、どの程度のペースで引き下げるべきかを巡る見解は一致していない」と述べた。BOEの追加利下げをめぐっては、3月会合では見送り。その次の5月か6月が有力視されている。

 加ドルは関税合戦懸念が重しとなる。トランプ米政権は1カ月猶予を与えたカナダへの関税について4月2日まで再延期すると伝わっていたが、27日にトランプ米大統領は自身のSNSに「メキシコとカナダに対する関税は3月4日に発動する」と投稿した。関税をめぐる発言が二転三転しており、土壇場で覆される可能性もあるが、発動になるとカナダの報復関税も必至だ。

 また、週末の加雇用統計にも注目。1月の雇用統計では、失業率が6.6%と予想外に2カ月連続で改善。新規雇用者数も7.6万人増と予想を大きく上回ったが、失業者総数は約150万人と高止まりしており、最近の雇用増にもかかわらず就職難が続いていることが示された。カナダ中銀(BOC)は「利下げによる効果で経済に改善の兆しがみられる」との見解を示しているが、個人消費や企業投資に力強さを欠いている。関税懸念が加ドルの重しとなる相場が当面続きそうだが、辞意を表明したトルドー加首相の後継を選ぶ与党・自由党の党首選を3月9日に控え関連のヘッドラインにも注目したい。次の首相にとってトランプ米政権への対応が大きな課題となるだろう。 

 なお、商品先物取引委員会(CFTC)統計による加ドルのポジションは昨年11月に米大統領選に勝利したトランプ氏がカナダへの関税を示唆したことを受けて売り越しが18万枚超と過去最高規模に拡大した。1月にかけても高い水準が続いたが、関税の発動が延期されたことでショートポジションは縮小するも2月18日時点での売り越しは14万枚超と依然として主要通貨のなかで圧倒的にショートが目立っており、加ドルの弱気見通しに変わりがないことが示唆されている。

2月24日週の回顧
 ポンドは独自の手がかりが乏しく、方向感が限られた。ポンドドルは1.27ドル台で上値が抑えられ、ポンド円は189円を挟んでの動きとなった。加ドルは、トランプ米大統領が1カ月延期されたカナダへの関税を「予定通りに発動する」と表明したことが重しとなり、ドル/加ドルは1.44加ドル半ば、加ドル円は103円半ばまで加ドル安が進んだ。(了)
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