東京為替見通し=円買い場探しは変わらず、実質賃金上昇すれば更に利上げ期待高まるか

 先週末の海外市場でドル円は2月米雇用統計発表直後に147.96円付近まで上げたものの、すぐに失速。一時146.95円と昨年10月4日以来約5カ月ぶりの安値を付けた。その後は方向感がなく147円後半に戻した後に、146.96円付近まで再び下押しするものの、引けにかけては米株が上昇し、米10年債利回りが4.32%台まで上昇したことも相場の支援材料となり、アジア時間に付けた148.16円を上抜けて一時148.20円と日通し高値を更新した。ユーロドルは米雇用統計の結果が伝わると一時1.0889ドルと昨年11月6日以来の高値を付けた。ただ、週末を控えたポジション調整目的の売りも出て1.0826ドル付近まで下押しした。

 本日の東京時間では、ドル円の上値は限られるか。先週末の本邦債券市場は5営業日ぶりに反発(利回りは低下)し、米債利回りは上昇して引けたことで、ドル円に買い戻しが多少入る可能性はあるだろう。ただ、連合が2025年の春闘の賃上げ要求を32年ぶりの高水準(6%)としていることなどで、本邦10年債利回りは6日には1.515%まで上昇し、日銀がこれまで主張していた賃金と物価の好循環の強まりが確認でき、利上げには動きやすい状況なことで円買い意欲は強い。

 更に、先週3日にはトランプ米大統領が「通貨安の国に関税を課す」と発言し、中国だけでなく日本も名指ししている。これまでは通貨操作に対して厳しかった米民主党政権とは違い、仮に円安が進んだ場合は、本邦からの円買い介入はトランプ政権の了承を得やすいことも、ドル円の重しになるだろう。

 賃金上昇が期待されている中で、本日注目されるのが1月の毎月勤労統計。中でもその中で発表される実質賃金に注目が集まる。11月の実質賃金は確報値で前年比+0.5%まで上がり、12月は確報値では下方修正されたものの+0.3%と2カ月連続でプラスとなった。1月は再びマイナスに転じるとの予想になっているが、市場予想の-1.6%程度よりも下げ幅が少ない場合には円が買われやすくなりそうだ。逆に実質賃金の下げ幅が大きかった場合には、今月の利上げ期待が萎む可能性もあり円売り要因になる。

 また、1月国際収支速報も発表され、その中で発表される貿易収支の結果にも目を通したい。12月は623億円の黒字だったものが、1月は2兆4961億円の赤字に転じるとの予想になっている。全体の貿易収支も重要だが、特に対米の貿易収支の結果には要注目。対米貿易の状況次第ではトランプ政権の圧力が増すことになるだろう。

 本日はアジア時間には、本邦以外からは主だった経済指標の発表予定はないが、昨日9日に中国からは2月の消費者物価指数(CPI)が発表されている。前年比では13カ月ぶりにマイナスに転じた。5日から始まり11日まで行われる全国人民代表大会(全人代)では、CPIの目標が+2%に引き下げられたが、さらに厳しい結果が出たことで、中国政府の動向にも注目したい。

 他にもトランプ政権の関税政策が引き続き市場を振幅させるだろう。先週はほぼ毎日トランプ米大統領が関税についての発表を行ってきたが、今週も様々な発言が予定されている。先週7日には鉄鋼とアルミニウムへの関税について、今週中に発表すると述べ、カナダに対して更なる関税を10日か11日に発表する予定と発言した。また、先週はインドの関税についても言及するなど、カナダとメキシコ、中国と先行して発表していた国々がトランプ氏の脅し(ディール)に屈しない姿勢を見せていることで関税対象国を広げ、どこかの国との成果を上げることに必死になっている。対象国が拡大になった場合には日本に対しても厳しい要求などが発表される可能性もあることで、内容によりその都度大きな値動きになりそうだ。

(松井)
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