東京為替見通し=13時発動の鉄鋼・アルミ関税巡り乱高下か、企業物価指数にも注目

 昨日の海外市場でドル円は、カナダへの関税をめぐる米政権の動向で147.03円付近まで下押し後、147.92円前後まで持ち直した。ユーロドルは独・緑の党が「防衛費を巡って交渉の用意がある」との見解を示すと、独財政拡大策を巡る交渉成立への期待感が高まりユーロ買いが進み、一時1.0947ドルと昨年10月11日以来5カ月ぶりの高値を更新した。

 本日の東京時間でドル円は、トランプ政権の関税をめぐる方針次第で乱高下することになりそうだ。もっとも、日銀に対する利上げ期待の高まりや、トランプ米大統領が円安を懸念していることでドル円の上値は限られるだろう。

 トランプ政権の鉄鋼製品とアルミニウムへの関税は、12日の米東部時間0時(日本時間の13時)すぎに発動する予定になっている。ただし、あまりにも朝令暮改を繰り返していることで、対象国を含め直前に変わる可能性もありそうだ。昨日は日本への課税ではなく、カナダ産の鉄鋼・アルミニウムの輸入関税を25%から50%に引き上げとの報道でドル円は1円超下落、一方で「50%の関税を取り下げる可能性を検討」とのトランプ米大統領の発言が伝わると1円弱上昇するなど、乱高下を繰り返した。本日も同様に、トランプ米大統領の発言が市場を動意づけることになるだろう。

 関税の対象国となった多くの国は、報復関税をすぐに発動することが濃厚だが、国防面なども絡んでくることを考えると、日本は報復関税には動きにくいかもしれない。その場合、関税回避のために日米で円安是正などの話し合いがもたれるようなことになった場合は、円相場が大きな転換点を迎えることになる。

 関税をめぐる動向がメイントピックであることには変わらないが、本日発表される2月の国内企業物価指数にも注目しておきたい。昨日は、本邦の1月消費支出が弱く、10-12月期実質国内総生産(GDP)の改定値が下方修正されると、小幅に円売りで反応した。しかし、その後は株安や時間外の米長期金利の低下に連れて、ドル円は146.54円まで下がり年初来安値を更新した。

 本邦の弱い経済指標の結果に対しての円売りの反応が限られているのは、債券市場では日銀のターミナルレートの水準が見えてこないことで、金利先高観が根強いままであることがあげられる。来週18-19日に迫る日銀金融政策決定会合を控えて、日銀関係者が一向に市場との対話を取ろうとしないことは、植田日銀総裁が着任後はほぼ政権の意向に従い、日銀に金融政策を決定する権限がないのではないかとの声も一部では出ている。日銀が金利先高観を否定しないことで、本邦の経済指標では弱い結果への反応は鈍く、強い結果となったものに市場は過敏に反応することになりそうだ。

 なお、国内企業物価指数の市場予想は、前年比で前回の+4.2%よりは低下するものの、+4.0%とインフレ目標の2%を超えている。よほど予想より低下しない限りは、本邦金利上昇を招き円買いに傾きやすそうだ。


(松井)
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