東京為替見通し=トランプ関税狂騒曲続く、株反発はドルの支えも売り要素もあり乱高下か
昨日の海外市場でドル円は、ベッセント米財務長官が最近の円高について「自然な流れ」と発言したことも相場の重しとなり、一時144.00円と昨年10月以来の安値を付けた。しかし、トランプ米大統領が「中国への関税を125%に引き上げる」とした一方、「米国に対して報復措置を取っていない国・地域を対象に関税(上乗せ分)引き上げを90日間一時停止する」と発表すると、148.27円まで急伸した。ユーロドルは、1.1095ドルから1.0914ドルまで弱含んだ。
本日の東京時間でドル円は、引き続き乱高下を繰り返すことになりそうだ。ベッセント米財務長官は75カ国以上が交渉のテーブルに着いたことで「トランプ米大統領の交渉戦略は成功した」との見解を示したが、政権内部以外では評価する声は少ない。多くはトランプ大統領によるチキンレースは勝者のないまま、世界経済の不安定さだけが残ったと評している。これからも最低90日間は継続されるチキンレースをめぐり、金融市場は方向感のない動きが続くだろう。
昨日トランプ米大統領が報復措置を取っていない国・地域を対象にした「上乗せ分の90日間一時停止」で、ダウ平均が第2次大戦後3番目の上げ幅を記録するなど、米株式市場が大幅に反発した。昨日のCME225先物は34860円と9日の大阪取引所比で3030円高で引けたことで、本日の日経平均も大幅な反発が予想されている。株の買い戻しは一定のドル買い・円売り要因となるだろう。
ただし、一方的にリスク選好の動きになりにくく、ドル円の売り要因も依然として多い。1つ目は上乗せ分が回避されたとはいえ、10%の基本税は継続されること。2つ目は90日間の猶予が与えられただけで、上乗せ分が90日後に再び復活する恐れがあること。3つ目は中国に対しての追加関税が125%まで上昇し、2大経済大国の争いが終わることがないこと、などがあげられる。
また、日本に関してはドル売り・円買い要因が強い。ここ最近はリスク回避の円買いよりも、日米間の円安是正の可能性による円買いという面も徐々にクローズアップされていた。昨日、加藤財務相も米国との関税交渉について、為替もテーマになり得ると認めていると発言。ベッセント財務長官も「強い円は正常」と昨日発言するなど、円安による貿易不均衡是正の声は根強い。ベッセント氏は、日本のほかにベトナムや韓国、インドなどアジアの複数の国との交渉をすることをあげ、各国の関税や非関税障壁の水準に加え、為替操作も協議の対象になる考えを示した。90日間の猶予期間の間に、40年前のプラザ合意のように、ドル高・アジア通貨安(円安)調整で合意された場合は、数円から10円程度の値幅では収まらず、再び100円や2桁のドル円相場も意識する必要もありそうだ。
他のドル円の売り要因としては、本邦勢の売り遅れもある。先週1日に発表された3月の日銀短観で2025年度の全規模・全産業の想定為替レートは147.06円(上期147.17円、下期146.95円)、大企業製造業は147.35円(上期147.43円、下期147.28円)となっている。現行のスポットでは概ね想定為替レートでドル円を売ることができる。また、猶予期間を迎える3カ月物のスワップポイントがおおよそ153ポイントということで、148円半ばから後半にかけては、スワップポイントを加味したレートで想定為替レートの輸出予約ができる。よって、147円台から上は売り意欲が引かないだろう。
なお、本日は本邦から3月企業物価指数、中国からは同月消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)が発表される。両国の指標とも重要指標で、通常は市場を動意づけるものだが、市場の目が関税政策に集まっているため、今回に限れば反応が限られることになりそうだ。
(松井)
本日の東京時間でドル円は、引き続き乱高下を繰り返すことになりそうだ。ベッセント米財務長官は75カ国以上が交渉のテーブルに着いたことで「トランプ米大統領の交渉戦略は成功した」との見解を示したが、政権内部以外では評価する声は少ない。多くはトランプ大統領によるチキンレースは勝者のないまま、世界経済の不安定さだけが残ったと評している。これからも最低90日間は継続されるチキンレースをめぐり、金融市場は方向感のない動きが続くだろう。
昨日トランプ米大統領が報復措置を取っていない国・地域を対象にした「上乗せ分の90日間一時停止」で、ダウ平均が第2次大戦後3番目の上げ幅を記録するなど、米株式市場が大幅に反発した。昨日のCME225先物は34860円と9日の大阪取引所比で3030円高で引けたことで、本日の日経平均も大幅な反発が予想されている。株の買い戻しは一定のドル買い・円売り要因となるだろう。
ただし、一方的にリスク選好の動きになりにくく、ドル円の売り要因も依然として多い。1つ目は上乗せ分が回避されたとはいえ、10%の基本税は継続されること。2つ目は90日間の猶予が与えられただけで、上乗せ分が90日後に再び復活する恐れがあること。3つ目は中国に対しての追加関税が125%まで上昇し、2大経済大国の争いが終わることがないこと、などがあげられる。
また、日本に関してはドル売り・円買い要因が強い。ここ最近はリスク回避の円買いよりも、日米間の円安是正の可能性による円買いという面も徐々にクローズアップされていた。昨日、加藤財務相も米国との関税交渉について、為替もテーマになり得ると認めていると発言。ベッセント財務長官も「強い円は正常」と昨日発言するなど、円安による貿易不均衡是正の声は根強い。ベッセント氏は、日本のほかにベトナムや韓国、インドなどアジアの複数の国との交渉をすることをあげ、各国の関税や非関税障壁の水準に加え、為替操作も協議の対象になる考えを示した。90日間の猶予期間の間に、40年前のプラザ合意のように、ドル高・アジア通貨安(円安)調整で合意された場合は、数円から10円程度の値幅では収まらず、再び100円や2桁のドル円相場も意識する必要もありそうだ。
他のドル円の売り要因としては、本邦勢の売り遅れもある。先週1日に発表された3月の日銀短観で2025年度の全規模・全産業の想定為替レートは147.06円(上期147.17円、下期146.95円)、大企業製造業は147.35円(上期147.43円、下期147.28円)となっている。現行のスポットでは概ね想定為替レートでドル円を売ることができる。また、猶予期間を迎える3カ月物のスワップポイントがおおよそ153ポイントということで、148円半ばから後半にかけては、スワップポイントを加味したレートで想定為替レートの輸出予約ができる。よって、147円台から上は売り意欲が引かないだろう。
なお、本日は本邦から3月企業物価指数、中国からは同月消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)が発表される。両国の指標とも重要指標で、通常は市場を動意づけるものだが、市場の目が関税政策に集まっているため、今回に限れば反応が限られることになりそうだ。
(松井)