東京為替見通し=現実味を帯びてきた円安是正の日米合意、RBNZのMPCにも注目

 昨日の海外市場でドル円は、相互関税を巡り対象国との交渉が進むとの期待から、ダウ平均が一時1400ドル超上昇すると147.67円付近まで値を上げた。ただ、「トランプ米政権は中国に対する104%の追加関税を明日9日に発動する」と伝わると、米中の貿易摩擦が激化するとの懸念からダウ平均が下げに転じ145.97円まで弱含んだ。ユーロドルは一時1.0889ドルと日通し安値を付けたものの、対円でドル安が進んだ影響も受けて、1.0978ドル付近まで持ち直した。

 本日の東京時間でドル円は、引き続き売り場探しの展開は変わらないか。米国の相互関税発表後、ドル円は4日に144.56円まで下落後、7日に148.15円、昨日は148.12円まで買い戻しが進んだ。米株の大幅下落を嫌気し一貫性が無いトランプ政権が、関税策の一時停止や緩和などを進めるとの期待で、ドル円が底を打ったと予想する声も一部ではある。しかし、トランプ大統領は自らを「関税男(Tariff Man)」と名付けるほど、就任前から第2次トランプ政権は関税を重要視していることもあり、簡単に一時停止や緩和を進めると判断するのは時期尚早だ。

 また、昨日にベッセント米財務長官が「日本は迅速に進み出たので優先の対応受ける」と発言した。日本は米国にとって、同盟国というよりも米国の要求を常に承諾する植民地のような扱いをしていることで、交渉は進めやすい国とみなしている。早めに成果が欲しいトランプ大統領にとっては、市場が想像するよりも早く交渉が進む可能性もありそうだ。

 一部では、米国からの輸入品増加、特に防衛予算の拡充などを行うとの予想もあるが、これらの米国支援は関税問題の解決や、米国の製造業支援にはほぼ役に立たない。よって、兼ねてからうわさされているドル高・円安修正(第2プラザ合意=マールアラーゴ合意)の可能性も現実味を帯びてきている。本日の日経新聞にも、「関税交渉、為替がカードに」との見出しで、「円高修正 思惑一致か」と大々的に報じている。日本側の関税をめぐる交渉担当として、赤沢経済財政・再生相が指名されたが、為替に関することは財務相の加藤氏が担当している。週末に石破首相と加藤財務相が会談を持ったということは、為替をカードとして使う場合の取り決めなどを話し合ったという可能性もありそうだ。また、日経新聞は政府の意向を徐々に伝えて、実際の発表があった時に市場が急転するのを避ける緩衝材となるための予測記事を掲載することがある。「マールアラーゴ合意」が現実を帯びてきていることで、想定為替レート(日銀が発表した3月の想定為替レートは、全規模・全産業、大規模製造業ともに147円台)に接近した場合には、引き続き売り場探しになりやすそうだ。
 
 なお、本日はニュージーランド準備銀行(RBNZ)の金融政策委員会(MPC)が開催されることで、NZドルの値動きにも目を向けておきたい。市場では政策金利を25ベーシスポイント引き下げ(3.75%から3.50%)予想となっている。RBNZ総裁だったオア氏が3年の任期を残して突然3月上旬に辞任したことで、当面はホークスビーRBNZ副総裁が総裁代行を務めている。オア前総裁は4月と5月にそれぞれ25bpの利下げを示唆していたが、前総裁辞任後にも同様の見解を示すか確認しておきたい。また、米国の相互関税はNZに対しては基本税の10%のみになっているが、この影響について昨日ウィリスNZ財務相は、NZへの影響よりもアジア経済の低成長を懸念する発言をしている。RBNZも同様な見解を示すかも注目したい。


(松井)
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