東京為替見通し=早朝は調整のドル買い戻し優勢もドル売り・円買い要因は豊富

 昨日の海外市場でドル円は、トランプ政権要人が中国との通商問題解決に前向きな発言をしたことで141.67円まで上昇した。ユーロドルは、1.1418ドルまで弱含んだ。

 本日早朝のオセアニア市場で、トランプ米大統領が中国との交渉に前向きな姿勢を見せたことや、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の解任計画を否定したことで、ドル円は143円、ユーロドルは1.13ドル台までドルが買い戻されている。連日値幅を伴ってドル売りが進んだことや、対円では140円の大台割れを達成したこともあり、調整の買い戻しが進んでいる。トランプ政権が米株や米債券売りが想定以上に進んだことへの焦りで、慌てて口先で米国売りを阻止しようとしている。本日は流動性が悪いこともあり、買い戻しが入ると値幅は大きくなるだろうが、中長期的なドル売り・円買い要因が拭いされていないことは変わらず、引き続きドル円の上昇局面では売り遅れている市場参加者のドル売り予約が目立ってくると想定される。
 
 早朝に、トランプ大統領は昨日ウォールストリートジャーナル(WSJ)紙が「トランプ米大統領がトリプル安の責任をパウエルFRB議長の責任に押し付けるための布石を敷いている」と掲載したことを否定したが、朝令暮改を繰り返すトランプ氏の発言を信用するのは難しい。バーFRB理事については、金融規制に厳格だったこともあり、トランプ政権の反感を買い、副議長職に関しては任期途中の2月末で退任している。過去にはレーガン政権時にボルカーFRB議長が辞任に追い込まれるなど、法的に解任が難しいFRB議長職を圧力により辞任に追い込むことは考えられる。米景気の後退の可能性が高まる中で、スケープゴートとしての責任をパウエル議長に押し付けることは変わらないだろう。

 また、米中の貿易戦争に関しても、中国はすでに米国以外の国との通商交渉が順調に進んでいることもあり、中国優位の状況でトランプ政権が中途半端な形で交渉を妥結するのも難しい。通商面以外でも中国の米国離れは進み、今週初には中国企業が「米国のプライベートエクイティへの新規投資を停止している」とファイナンシャル・タイムズ紙が報じるなど米国離れが着実に進んでいる。今後は中国が出資しているブラックロックなどを含むファンドからも資金を引き上げるなど、米債や米株などの指数だけではなく、多くの米国企業からの資金離れが加速する可能性もありそうだ。

 また、ドル売り要因だけではなく、円買い要因もある。昨日加藤財務相は24日と報じられている日米財務相会談について「調整中」としたものの、為替についてベッセント米財務長官と協議したいとも述べている。3月の日銀短観で発表された想定為替レートは「全規模・全産業は上期147.17円、下期146.95円、通期147.06円」、大企業製造業は「上期147.43円、下期147.28円、通期は147.35円」となっているように、本邦勢を中心にドル円の売り遅れが目立っている。流動性も悪いことでドルの買い戻しも相応に値幅を伴う警戒感はあるが、反発局面ではドル売りが散見されるだろう。

 なお、21日からワシントンDCで行われる国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会の春季会合がはじまったが、トランプ政権は国際協調を取る姿勢はないことで各国間との個別対応に追われることになりそうだ。前回のG20にルビオ米国務長官、ベッセント米財務長官が不参加になるなど、トランプ政権は国際協調を軽視していることで、為替の問題を含めこれまで通りの常識では通じない交渉になりそうだ。


(松井)
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