東京為替見通し=現在進行形の日米関税協議に注目、日本の交渉カードは少ない

 昨日の海外市場でドル円は、日銀金融政策決定会合の結果や植田和男日銀総裁の記者会見の内容を受けて、日銀が追加利上げに慎重との見方が広がる中、NY市場に入っても円を売る動きが継続した。4月米ISM製造業景況指数が48.7と予想の48.0を上回ると全般ドル買いも優勢となり、一時145.73円と4月10日以来の高値を付けた。ユーロドルは、一時1.1266ドルまで弱含んだ。

 本日の東京時間でドル円は、現在進行形と思われる日米関税交渉の結果次第の動きになりそうだ。結果次第で日銀金融政策決定会合のドル円の上昇基調が続くのか、もしくは昨日の上げ幅を帳消しにするかになる。
 
 支持率が急落しているトランプ政権にとっては、関税交渉で何某らかの前向きな結果を示したい。今回の交渉を下地に、6月にカナダで開催されるG7サミットで石破首相とトランプ米大統領が合意を発表する道筋を立てたいだろう。一方で、同じく支持率が低い石破政権は、7月までに行われる参議院選挙で国民の支持率の更なる低下につながるような同意は避けたく、合意結果は参議院選挙後に判明するようにしたいと思われる。

 本邦の報道によると、交渉カードの1つ目は自動車に関する規制について、2つ目は農産物の輸入となっている。このこともあってか、昨日石破首相はトヨタ自動車の豊田会長と会談している。石破首相が高校・大学の同窓でもある豊田会長に、日本の自動車企業の米国への多額投資をさらに促すことを依頼した可能性もある。ただ、自動車や農産物だけでトランプ政権が満足できるとも思えず、交渉が前に進まないかもしれない。

 更に、警戒しなくてはならないのは、昨日日銀が政策金利を据え置き、円安が進んでいることである。先月28日にベッセント米財務長官は「欧州中央銀行(ECB)は、ユーロを下落させるために利下げを行うだろう」と発言したように、トランプ政権は米国以外の国の低金利政策は「自国通貨安・ドル高に結び付けている」との認識を持っているようだ。早朝に加藤財務相は先の日米財務相会談で「為替の水準のあるべき議論は全くなかった」と改めて言及した。ただ、日本の交渉カードが少ない中で、為替がカードの1つになる可能性も依然としてあることは念頭に入れておきたい。

 なお、本日は本邦からは3月の完全失業率等の経済指標が発表されるが、市場の注目はNY時間午前の4月の米雇用統計になる。東京時間では引き続きボラタイルな値動きになりそうだが、米雇用統計後には全く違った相場展開にもなりかねないことも注意したい。


(松井)
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