東京為替見通し=日米財務相会談では反応薄、経済指標は東京都区部CPIに注目

 昨日の海外市場でドル円は、3月米中古住宅販売件数が年率換算で402万件と予想の413万件を下回ったことが分かると一時142.28円と日通し安値を付けた。ただ、米株価が一段高となり142.83円付近まで下値を切り上げた。ユーロドルは、1.1348ドル付近まで下押ししたものの、NY引けにかけては1.1398ドルまで強含んだ。

 本日の東京時間でドル円は、前日レンジを踏襲しながら神経質な動きにはなりそうだが、上値は限定的と予想する。今週に入り、トランプ政権が米トリプル安を回避したいため、中国への関税交渉に前向きだ。政権の期待通りにダウ平均やナスダック総合は3日続伸し、株安には一定の歯止めがかかった。ただ、ドルの買い戻しは徐々に効果が弱まってきていることで、本日もドルの上値は限られるのではないか。

 日本時間早朝まで行われていた日米財務相会談では、時間的な制約もあり予想通り表面的な話し合いで終わったようで、加藤財務相の会見での反応は限られた。加藤財務相は「米国からは為替に関して目標やそれに対する枠組みの話は全くなかった」と述べたが、ベッセント米財務長官と「為替に関して緊密かつ建設的な議論で一致」と会見で表明した。ただし、やり取りの中身や具体的なコメントを控えるとしている。

 この「建設的な議論」が具体的にどのような内容であったかが、今後の注目点になるだろう。日米会談の前に行われた米韓会談では、為替の件は今後2国間で協議する旨の発表があったことを考えると、米国が円だけではなくアジア通貨安全般について懸念していると考えられる。

 財務相会談が終わり、市場の注目は2回目の日米関税交渉に移る。赤沢経済再生相は4月30日に出発し、翌1日にベッセント米財務長官達と協議を行う。ただ、前回の交渉で自らのことを(トランプ米大統領と比較し)「格下の格下」と発言する赤沢氏が主導の下で、大きな進展を期待するのは難しいという声が多い。

 今週に入りトランプ政権が中国に対する税率を引き下げることを示唆するなど、弱気の姿勢を見せている。そのため、日本政府が早急に通商問題解消をするよりも時間をかけて交渉する方が優位に立てるとの認識を持てば、来週の協議も進展を期待できないかもしれない。なお、トランプ米大統領は中国との会談をもったとしているが、中国側は交渉は一切行われていないと発表するなど、米国側の焦りが出ているようだ。

 本日発表される経済指標では、国内の消費者物価指数(CPI)の前哨戦となる、4月の東京都区部CPIに注目。米国の相互関税の影響が出てくるのが年後半ということで、4月のインフレ率で市場が大きく反応することは難しいだろうが、来週行われる日銀政策決定会合の声明などに影響を与えることが予想されるため、注意深く見ておく必要はありそうだ。

(松井)
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