NY為替見通し=ドル円はしっかり、米中貿易摩擦の緩和で

 米中両国がお互いに関税を大幅に引き下げたことを受けてリスク選好の動きが強まり、ドル円は一時4月9日以来の148円台を回復した。二大経済大国の貿易戦争の激化懸念が後退したことはいったん市場に安心感を与えることになったのは確かだ。

 スイスで10・11日の米中閣僚級の協議を終えて、米国は中国製品への関税を90日間145%から30%へ、中国は米製品への関税を125%から10%へ大幅に引き下げると合意した。この協議に当たり、トランプ米大統領は「中国への関税は80%が妥当」と述べていたが、それを大きく下回ることになった。正直、関税のどの水準が妥当なのかはトランプ氏本人も知らないだろう。世界経済に大きな影響を与える二大国の緊張感の緩和は喜ばしいことだが、トランプ政権が発足して以来関税の乱発と修正を繰り返しており、世間にトランプ氏の「軽挙妄動」の印象を一層強めている。

 これからまだトランプ米大統領の自画自賛の発言が伝わりそうだが、結局は中国に大きく譲歩したことになる。トランプ氏が政権を発足した後、対中関税の引き上げは中国からの譲歩を引き出すための脅しであったが、得られたものは何もない。関税の引き下げはすんなり行ったが、米国と中国は過去数十年に労働基準やダンピング(不当廉売)、環境規制、資本管理を含む多種多様な非関税障壁を巡って対立を続けており、トランプ米大統領はこの問題を解決しようとしているが、極めて難しいことである。中国の徹底抗戦、4月中旬の「米国売り」がトランプ政権に脅威を与え対中方針を修正したが、これからも両国の貿易摩擦は続くことになる。米国とほかの国との交渉も残されており、関税をめぐる不確実性は払しょくされていない。

 米中両国の貿易摩擦への過度な警戒感が緩んだだけであり、払しょくされたわけではない。この材料でドル円のトレンドが変わるほどではない。この先も関税関連のヘッドラインに神経質な動きが続きそうだ。本日のNYタイムでは注目の指標発表は予定されておらず、ドル円は米株・米金利の動向や要人発言などを眺めながらの動きとなるも、本日これまで大きく上昇し、その反動が見られる可能性がある。

・想定レンジ上限
 ドル円、4月9日高値148.27円や4月3日高値149.28円が上値めど。

・想定レンジ下限
 ドル円、節目の147.00円や先週末9日の高値146.19円が下値めど。

(金)
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