東京為替見通し=ドル円、米中貿易協定を受けて底堅い展開か
12日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米中両国が関税の大幅な引き下げで合意したことを受けて、貿易摩擦が世界経済に悪影響を及ぼすとの懸念が後退し、ダウ平均が1100ドル超上昇したことなどで148.65円まで上昇した。ユーロドルは1.1065ドルまで下落した。ユーロ円は米中貿易戦争激化に対する懸念が緩和し、日米株価指数が大幅に上昇したことで164.92円まで上昇した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、米中貿易協定を受けて底堅い展開が予想される。
ドル円の上値の注目水準は、1月10日高値158.87円から4月22日安値139.89円までの下落幅の半値戻し149.38円や、200日移動平均線の149.72円となる。
ベッセント米財務長官と中国の何立峰副首相は、10-11日の米中貿易協議の後の12日に90日間の米中貿易協定を締結し、115%の関税引き下げを決定した。米国と中国は、今後90日間の猶予期間を設けて、米国は中国に対する関税率を145%から30%に引き下げ、中国は米国産品に対する関税率を125%から10%に引き下げることで合意した。
第1次トランプ米政権では、2018年に貿易交渉後に対立を一時停止することで合意したものの、米国が合意から離脱し、1年半余りにわたって関税賦課と協議が続き、最終的に2020年1月の第1段階米中貿易合意の署名に至った。第2次トランプ米政権でも、2025年5月に90日間の米中貿易協定で合意したが、3カ月後に、対中貿易赤字を削減できる最終的な合意に至れるのかは、依然として不明ではある。
今後の注目ポイントは、週末に予定されている米中首脳会談や第1次トランプ米政権の二の舞になる可能性などとなる。
ドル円が148円台まで上昇していることで、過去最大規模に拡大していたIMMシカゴ筋の円の買い持ちポジションに代表されるドル円のショートポジションが、手仕舞われつつあるのかもしれない。
シカゴ筋がドル売り・円買いのポジションに傾いた背景には、日銀の追加利上げ観測、米連邦準備理事会(FRB)の追加利下げ観測、トランプ関税を巡るドル下落観測などがあったと思われる。しかし、日銀金融政策決定会合では、トランプ関税の「不確実性」を理由にハト派的な据え置きとなり、米連邦公開市場委員会(FOMC)でも「不確実性」を理由に、タカ派的な据え置きとなっており、米英貿易協定の締結合意や米中貿易協定を受けて、手仕舞いを余儀なくされつつある。
4月30日-5月1日開催の日銀金融政策決定会合における『主な意見』では、ハト派的な据え置きの背景を見極めることになる。
日銀金融政策決定会合では、トランプ関税によって世界経済の不確実性が一段と増す中で、経済・物価見通しを下方修正するとともに、2%の物価安定目標の実現時期を1年程度先送りした。そして、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の中核である基本的見解から、日銀の利上げ路線の根幹を成してきた「賃金と物価の好循環」という文言が消滅した。『主な意見』の順序は、多数派である植田日銀総裁、内田日銀副総裁、氷見野日銀副総裁、そして少数派となっており、ハト派とタカ派の多少を見極めることになる。
また、今回の米中貿易協定により、不確実性が減退したことで、6月日銀金融政策決定会合に向けた利上げ観測が高まることには警戒しておきたい。
(山下)
本日の東京外国為替市場のドル円は、米中貿易協定を受けて底堅い展開が予想される。
ドル円の上値の注目水準は、1月10日高値158.87円から4月22日安値139.89円までの下落幅の半値戻し149.38円や、200日移動平均線の149.72円となる。
ベッセント米財務長官と中国の何立峰副首相は、10-11日の米中貿易協議の後の12日に90日間の米中貿易協定を締結し、115%の関税引き下げを決定した。米国と中国は、今後90日間の猶予期間を設けて、米国は中国に対する関税率を145%から30%に引き下げ、中国は米国産品に対する関税率を125%から10%に引き下げることで合意した。
第1次トランプ米政権では、2018年に貿易交渉後に対立を一時停止することで合意したものの、米国が合意から離脱し、1年半余りにわたって関税賦課と協議が続き、最終的に2020年1月の第1段階米中貿易合意の署名に至った。第2次トランプ米政権でも、2025年5月に90日間の米中貿易協定で合意したが、3カ月後に、対中貿易赤字を削減できる最終的な合意に至れるのかは、依然として不明ではある。
今後の注目ポイントは、週末に予定されている米中首脳会談や第1次トランプ米政権の二の舞になる可能性などとなる。
ドル円が148円台まで上昇していることで、過去最大規模に拡大していたIMMシカゴ筋の円の買い持ちポジションに代表されるドル円のショートポジションが、手仕舞われつつあるのかもしれない。
シカゴ筋がドル売り・円買いのポジションに傾いた背景には、日銀の追加利上げ観測、米連邦準備理事会(FRB)の追加利下げ観測、トランプ関税を巡るドル下落観測などがあったと思われる。しかし、日銀金融政策決定会合では、トランプ関税の「不確実性」を理由にハト派的な据え置きとなり、米連邦公開市場委員会(FOMC)でも「不確実性」を理由に、タカ派的な据え置きとなっており、米英貿易協定の締結合意や米中貿易協定を受けて、手仕舞いを余儀なくされつつある。
4月30日-5月1日開催の日銀金融政策決定会合における『主な意見』では、ハト派的な据え置きの背景を見極めることになる。
日銀金融政策決定会合では、トランプ関税によって世界経済の不確実性が一段と増す中で、経済・物価見通しを下方修正するとともに、2%の物価安定目標の実現時期を1年程度先送りした。そして、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の中核である基本的見解から、日銀の利上げ路線の根幹を成してきた「賃金と物価の好循環」という文言が消滅した。『主な意見』の順序は、多数派である植田日銀総裁、内田日銀副総裁、氷見野日銀副総裁、そして少数派となっており、ハト派とタカ派の多少を見極めることになる。
また、今回の米中貿易協定により、不確実性が減退したことで、6月日銀金融政策決定会合に向けた利上げ観測が高まることには警戒しておきたい。
(山下)