NY為替見通し=台湾を巡る米中緊迫化リスク回避の円買い継続か

 本日のNY為替市場のドル円は、ペロシ米下院議長が2日に台北に到着し、3日朝に 蔡英文総統と会談する予定を受けた米中間の緊張の高まりへの警戒感から、リスク回避の円買い圧力が強まりつつあり、下値リスクに警戒する展開となる。

  中国外務省の趙立堅報道官は、ペロシ米下院議長が台湾を訪問すれば、「中国軍は座視しない」と警告した。「米下院議長の台湾訪問は深刻な政治的影響をもたらす。中国の内政に対する重大な干渉であり、非常に深刻な展開と結果につながる」と警鐘を鳴らした上で、「中国人民解放軍が傍観することは絶対になく、中国は主権と領土を守るために断固とした対応と強力な対抗措置を取ることを米国にもう一度伝えたい」と警告している。
 一方で、米国海軍は台湾東方に艦艇4隻を配備している、と報じられている。

 ドル円のテクニカル分析では、5月24日の126.36円から7月14日の139.39円まで上昇した後、半値押しの132.88円、61.8%押しの131.34円を下回り、76.4%押しの129.44円を目指す調整局面を形成しつつある。一目均衡表でも、重要な支持帯である雲を下抜けており、三役逆転の売り時代に入っており、全値押しとなる126.36円付近までの下落の可能性に要警戒か。

 昨日発表された米7月のISM製造業景気指数は52.8となり、6月の53.0、5月の56.1からの低下傾向が確認された。今週末の雇用統計を占う意味で注目された雇用指数は49.9で、6月の47.3から改善していたものの、価格指数は60.0で、6月の78.5から大幅に低下しており、インフレピーク説への警戒感を高めている。
 明日発表される米7月ISM非製造業景気指数、そして雇用、価格指数などを見極めつつ、5日に発表される米国7月の雇用統計を待つことになる。

 本日は、エバンズ米シカゴ連銀総裁とメスター米クリーブランド連銀総裁の講演が予定されている。最近の低調な米国経済指標や2四半期連続のマイナス成長というテクニカル・リセッションを受けての9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅への言及に要注目か。

 8月は円高アノマリーの季節であることで、円高リスクに警戒しておきたい。
 これまで、1990年のイラクのクウェート侵攻、1997年のアジア通貨危機、1998年のロシアのデフォルト(債務不履行)、2007年のパリバショック、2011年の米国債格下げショック、2015年の中国人民元切り下げショック、2019年の米中貿易・通貨安戦争の勃発などにより、リスク回避の円高に見舞われてきている。

・想定レンジ上限
 ドル円の上値の目処(めど)は、雲の下限131.48円。

・想定レンジ下限
 ドル円の下値の目処(めど)は、6月2日の安値の129.51円。



(山下)
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