週間為替展望(ポンド/加ドル)-英・加の7月CPIに注目
◆ポンド、7月英CPIの結果がポイント。前回は40年ぶりの高水準
◆英国次期首相を決める保守党の党首選の行方にも注視
◆加ドル、加7月CPIは米国にならい鈍化の可能性も
予想レンジ
ポンド円 159.50-165.50円
加ドル円 101.50-105.50円
8月15日週の展望
英国からは複数の経済指標が発表されるが、最大の注目は17日発表の7月英消費者物価指数(CPI)だろう。結果次第では、イングランド銀行(英中銀、BOE)が8月会合で示した「積極的な金融引き締めの姿勢を継続させる」との思惑が強まるかもしれない。
6月英CPIは前年比9.4%と市場予想より伸び率が加速し、約40年ぶりの高水準を記録。想定以上の上昇を受けてBOEは政策金利の0.50%引き上げを決定し、インフレ抑制への強い意志を表した。ただ、金融引き締めは強化されたものの、今後も英インフレは悪化するとの見方は多い。今月公表されたBOEの金融政策報告書でも、ロシアのガス供給制限がエネルギー小売価格に反映されると、今年10-12月期にはCPIが前年比13%程度まで上昇するとの予測が示された。
今後、もし前回同様のペースで英利上げが続いたとしても、現行1.75%の政策金利は年末でも3.25%だ。BOEは来月から保有国債の売却も開始するが、インフレ率を望み通りの水準まで落ち着かせるには時間がかかるだろう。そうなると金利高が長引くことになり、その影響による景気停滞は思っていた以上に深刻となるかもしれない。
英国の次期首相を決める保守党・党首選の結果発表は9月5日。英メディアによれば、トラス外相が支持率でスナク前財務相を大きくリードしているもよう。そのトラス氏は、首相に就任すればただちに減税を行うと主張している。その減税が更なるインフレ高進に繋がりかねないとの意見も多く、その場合はポンドにとっては好ましくない状況となってしまう。
カナダでは16日に7月CPIが発表される。前回6月分は前年比8.1%と予想から下振れたものの、水準としては1983年1月以来の伸び率を記録。CPI発表前に1.00%の大幅利上げを実施したカナダ中銀(BOC)の見解である「インフレは一段と高く持続的になっている」ことを確認した形となった。ただ、カナダと地理的・経済的に近い米国の7月CPIが予想以上に鈍化しており、加インフレも上昇一服となる可能性もある。そうなると来月のBOC会合に向けた「過度な金利高への警戒感」が緩み、加経済にとってはポジティブ要因となるだろう。
その他、カナダの主要輸出品目である原油の価格動向にも注視する必要がある。先物は荒い値動きが続いているが、ロシアのウクライナ侵攻前の水準で推移。今後は、世界的な景気減速による原油需要減への懸念がどの程度まで高まるかがポイントとなりそうだ。
8月8日週の回顧
ポンド円は163円台から161円台まで水準を落とす場面があった。7月米インフレ指標が下振れし、米金利低下と供に急落したドル円に引きずられた。一方、ポンドドルは1.20ポンド台から1.22ポンド台まで上昇。過度な米金利先高観が後退するなかドル売りが強まった。なお、英政府は来年1月にも計画停電の実施を検討しているとの報道が伝わり、ポンド安に傾く局面もあった。
加ドルは対円では105円付近を頭に103円台まで弱含む一方、対ドルでは1.29加ドル台から1.27加ドル台まで加ドル高に傾いた。為替全般の円買いやドル売りの流れに歩調を合わせた。(了)
◆英国次期首相を決める保守党の党首選の行方にも注視
◆加ドル、加7月CPIは米国にならい鈍化の可能性も
予想レンジ
ポンド円 159.50-165.50円
加ドル円 101.50-105.50円
8月15日週の展望
英国からは複数の経済指標が発表されるが、最大の注目は17日発表の7月英消費者物価指数(CPI)だろう。結果次第では、イングランド銀行(英中銀、BOE)が8月会合で示した「積極的な金融引き締めの姿勢を継続させる」との思惑が強まるかもしれない。
6月英CPIは前年比9.4%と市場予想より伸び率が加速し、約40年ぶりの高水準を記録。想定以上の上昇を受けてBOEは政策金利の0.50%引き上げを決定し、インフレ抑制への強い意志を表した。ただ、金融引き締めは強化されたものの、今後も英インフレは悪化するとの見方は多い。今月公表されたBOEの金融政策報告書でも、ロシアのガス供給制限がエネルギー小売価格に反映されると、今年10-12月期にはCPIが前年比13%程度まで上昇するとの予測が示された。
今後、もし前回同様のペースで英利上げが続いたとしても、現行1.75%の政策金利は年末でも3.25%だ。BOEは来月から保有国債の売却も開始するが、インフレ率を望み通りの水準まで落ち着かせるには時間がかかるだろう。そうなると金利高が長引くことになり、その影響による景気停滞は思っていた以上に深刻となるかもしれない。
英国の次期首相を決める保守党・党首選の結果発表は9月5日。英メディアによれば、トラス外相が支持率でスナク前財務相を大きくリードしているもよう。そのトラス氏は、首相に就任すればただちに減税を行うと主張している。その減税が更なるインフレ高進に繋がりかねないとの意見も多く、その場合はポンドにとっては好ましくない状況となってしまう。
カナダでは16日に7月CPIが発表される。前回6月分は前年比8.1%と予想から下振れたものの、水準としては1983年1月以来の伸び率を記録。CPI発表前に1.00%の大幅利上げを実施したカナダ中銀(BOC)の見解である「インフレは一段と高く持続的になっている」ことを確認した形となった。ただ、カナダと地理的・経済的に近い米国の7月CPIが予想以上に鈍化しており、加インフレも上昇一服となる可能性もある。そうなると来月のBOC会合に向けた「過度な金利高への警戒感」が緩み、加経済にとってはポジティブ要因となるだろう。
その他、カナダの主要輸出品目である原油の価格動向にも注視する必要がある。先物は荒い値動きが続いているが、ロシアのウクライナ侵攻前の水準で推移。今後は、世界的な景気減速による原油需要減への懸念がどの程度まで高まるかがポイントとなりそうだ。
8月8日週の回顧
ポンド円は163円台から161円台まで水準を落とす場面があった。7月米インフレ指標が下振れし、米金利低下と供に急落したドル円に引きずられた。一方、ポンドドルは1.20ポンド台から1.22ポンド台まで上昇。過度な米金利先高観が後退するなかドル売りが強まった。なお、英政府は来年1月にも計画停電の実施を検討しているとの報道が伝わり、ポンド安に傾く局面もあった。
加ドルは対円では105円付近を頭に103円台まで弱含む一方、対ドルでは1.29加ドル台から1.27加ドル台まで加ドル高に傾いた。為替全般の円買いやドル売りの流れに歩調を合わせた。(了)