東京為替見通し=明日の米8月雇用統計控え動意薄、中国人民元と製造業PMIに要注目

 31日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが一時3.1945%前後まで上昇したことで139.00円まで上昇した。ユーロドルは8月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値が過去最高の前年比9.1%上昇と発表され、来週8日の欧州中央銀行(ECB)理事会での0.75%の利上げ観測が高まったことで、1.0079ドルまで上昇した。ユーロ円も139.73円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、明晩発表される米国8月の雇用統計を控えて動きづらい展開の中、人民元基準値や中国8月のPMIを見極める展開が予想される。
 
 米国8月の雇用統計の予想は、非農業部門雇用者数が前月比+30.0万人で7月の前月比+52.8万人から増加幅が減少することが見込まれ、失業率は7月と変わらずの3.5%と見込まれている。7月の増加幅程度になれば、9月20-21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げ幅が0.75%となる確率が高まり、予想を下回れば0.50%の利上げ確率が高まることになる。しかし、パウエルFRB議長は、26日のジャクソンホール会合で、高金利の状態が当面続くことを示唆しており、ドル円の下値は限定的だと思われる。
 昨日発表された8月のADP全米雇用報告は前月比+13.2万人だった。ADP全米雇用報告は、民間給与計算代行業者大手のオートマチック・データ・プロセッシング社(Automatic Data Processing)が、雇用統計の先行指標として、自身の持つ全米約50万社、約2500万人のデータを元にして、2006年5月から発表を開始した雇用調査報告である。
 昨日は、休止期間を経て、雇用統計との確度を高めた新方式で発表されており、明日の雇用統計で真価が問われることになる。ホワイトハウス報道官も「週末の米雇用統計は若干弱めの数字となりそうだ」と述べており、市場予想を下回る数字に要警戒となる。

 本日は、中国人民銀行(中央銀行)が日本時間10時15分頃に設定する中国人民元の対ドル基準値(中間値)に注目したい。昨日の人民元の対ドル基準値は、2年ぶりの元安水準となる1ドル=6.8906元に設定された。最近のドル高基調を反映したものだが、市場予想に比べると6営業日連続で元高だったことで、急激な元安に歯止めをかける意図が確認され、ドルの上値を抑える要因となった。
 中国人民銀行は、先月、景気支援策として利下げに踏み切り、輸出振興のためにある程度の元安を容認する姿勢を強めているとみられる。市場では、2020年7月以来の7元台復帰が見込まれているが、中国国家外国為替管理局(SAFE)は急激な元安は望んでおらず、先週も複数の銀行に対して積極的な人民元売りを控えるように警告したと報じられている。本日も、市場予想より元高方向に設定されるのか否かに要注目か。

 10時45分に発表される8月Caixin中国製造業PMIは50.0と予想されており、7月の50.4からの低下が見込まれている。昨日発表された中国8月製造業PMIは49.4と発表され、7月の49.0から改善していたものの、2ヵ月連続で景況感判断の境目である50を下回った。8月Caixin中国製造業PMIが50を下回った場合、中国の景気減速懸念が高まり、10月16日からの第20回共産党大会に向けて、更なる景気刺激策、すなわち人民元売り圧力が強まることが予想される。



(山下)
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