週間為替展望(豪ドル/ZAR)-豪ドル、インフレは抑制的

◆豪州 他国と比較しインフレは抑制的、スタグフレーション懸念も少ない
◆RBAの予想通りに失業率が低下するかに注目
◆ZAR、ネガティブ要因多数も国内エネルギー価格下落は支えに

予想レンジ
豪ドル円 95.00-101.00円
南ア・ランド円 8.00-8.50円

9月12日週の展望
 豪ドルは底堅いか。
 ロシア国営の天然ガス会社ガスプロムが主要パイプライン「ノルドストリーム1」を通じたガス供給停止を無期限で延長したことを受けて欧州の景気懸念が強まり、欧州通貨が対ドルで売られ、豪ドルも対ドルで弱含んだ。ロシアを巡る政治的な混迷や、欧州や中国に景気減速懸念が高まっていることで、避難通貨としてドル買い意欲が来週も継続されることになれば、欧州通貨に対するドル買いに連れて、豪ドル/ドルも上値は限られるか。

 しかしながら、豪州国内は欧州などと比較すると悲観論は少ない。7月に前年比で5.4%まで上昇していたメルボルン・インスティテュートのインフレ率は、8月は4.9%まで抑えられた。ロウ豪準備銀行(RBA)総裁も「金利上昇のペースを緩やかにするケースが強くなることを認識」と述べ、インフレを抑制しつつある。通常は、金利上昇一服は通貨売りになるが、先週発表された小売売上高も市場予想を上回るなどスタグフレーション懸念が少ないことは、むしろ豪ドルには好要因になりそうだ。実際に、今週はそれぞれ対ドルで円は1998年以来、ポンドは1985年以来の安値を更新したにもかかわらず、豪ドルの対ドルでの下げ幅は限られている。

 来週の経済指標では15日に発表される8月雇用統計に注目。RBA理事会では「今後数カ月の間に失業率がさらに低下し、その後、経済成長の鈍化に伴い、失業率はいくらか上昇する」との予想を立てている。RBAの予想通りに失業率が低下するかに注目したい。

 南アフリカ・ランド(ZAR)は、ドル円の買いの勢いが弱まらないことで対円は下値を切り上げる可能性はあるが、対ドルでは上値は重いか。ZARの売り要因としては、黒字予想だった4-6月期経常収支が870億ZARの赤字となったこと、7-9月期消費者信頼感指数は前回の-25から-20に改善したものの13四半期連続でマイナスとなり、1982年以来最長のマイナス期間となったことなどがあげられる。
 
 一方、ZARの買い要因は毎月第1水曜日に公表される南ア国内のエネルギー価格が2020年以来最大の下げ幅になったことだ。エネルギー価格高騰による景気停滞リスクが軽減したことはZARの支えになる。なお、来週の経済指標は14日に7月小売売上高が発表される。

9月5日週の回顧
 豪ドルは対円では上昇、対ドルでは小幅安。今週行われたRBA理事会の声明で、決まった道筋にあるわけではないとしながらも、「理事会は今後数カ月、さらに金利を引き上げると予想している(The Board expects to increase interest rates further over the months ahead)」との文言が追加され、前回よりもややタカ派の内容だった。しかし、翌日に講演を行ったロウRBA総裁の発言がハト派の内容だったことで上値が抑えられた。

 ZARは、対円ではドル円が大幅に上昇したことで、堅調な動きを見せた。一方、対ドルでは米金利上昇に連れて2020年8月以来の水準までドル買い・ZAR売りが進んだ。なお、南アの4-6月期国内総生産(GDP)は前期比では予想よりも小幅に上振れたが、前年比では予想を下回りまちまちの結果になった。(了)

(小針)
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