東京為替見通し=ドル円、今夜の米国9月雇用統計への思惑から底堅い展開か

 6日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが3.84%台まで上昇したことなどで145.14円まで上昇した。ユーロドルは欧州中央銀行(ECB)の大幅利上げ継続がユーロ圏の景気悪化につながるとの懸念から、0.9788ドルまで下落した。ポンドドルも英中銀(BOE)が国債の買い入れを減らし、債券需給が緩むことへの警戒感が浮上したことで1.1114ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、今夜発表される米国9月の雇用統計への思惑から底堅い展開が予想される。

 米国9月の失業率の予想は3.7%で、8月の3.7%と変わらず、非農業部門雇用者数の予想は前月比+25万人で、8月の前月比+31.5万人からの増加幅の減少が見込まれている。懸念材料は、パウエルFRB議長が9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で言及していた求人数と失業者数の比率が、8月は低下していたことが挙げられる。さらに、減少した8月の求人数が幽霊求人広告によって押し上げられている、との指摘もあることで、9月雇用統計への警戒感を高めている。

 9月のFOMCでのドット・プロット(金利予測分布図)では、年末のFF金利の予想中央値は4.4%だったことで、現在の3.00-25%から1.25%程度の利上げが示唆されている。すなわち、9月の雇用統計が予想を上回るポジティブサプライズだった場合は、11月のFOMCでの0.75%利上げ、そして12月のFOMCでは0.50%の利上げ確率が高まり、予想を下回るネガティブサプライズだった場合は、11月の利上げが0.50%となる可能性が高まることになる。

 パウエルFRB議長は、9月のFOMCの後に、インフレを抑制するために「我々は、最後までやり遂げなければならない」と宣言しており、雇用情勢が悪化するという「痛み(pain)」は当面無視されることになる。

 今夜の注目ポイントは、雇用統計がポジティブサプライズとなり、9月22日の高値145.90円に向けたドル買い圧力が高まった時、本邦通貨当局がニューヨーク市場で、ドル売り・円買い介入を行うのか否かとなる。

 報道によると、神田財務官は、昨年10月のイタリア・ローマで開催された20カ国・地域(G20)会合で、イエレン米財務長官と話し込んでいたらしい。おそらく、米国政府の借用書である米国債(※7月時点の保有高:1兆2343億ドル)には手を付けず、外貨預金1300億ドル規模の円買い介入を許可してもらったのかもしれない。

 リスクシナリオは、本邦通貨当局がニューヨーク連銀に委託介入を行った場合となる。

 2008年のノーベル経済学賞、ポール・クルーグマン教授は、ドル独歩高による新興国や世界経済への弊害を指摘しており、米国多国籍企業の収益にも悪影響を与えることから、11月の中間選挙に向けて警戒しておきたい。


(山下)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。