東京為替見通し=明日の日銀正副総裁の国会提示と米1月CPI控えて動きづらい展開か

 10日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、日銀の次期総裁人事を巡る報道を受けた欧州市場序盤の安値129.81円から、良好な米経済指標や米長期金利の上昇を受けて、131.60円付近まで強含みに推移した。ユーロドルは、米10年債利回りが一時3.7492%前後まで上昇したこと、米2月消費者態度指数(速報値)が66.4と予想を上回り、1年先の期待インフレ率が4.2%と予想を上回ったことなどで1.0666ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、重要な経済指標や要人発言の予定がない中、明日14日に政府が日銀正副総裁の人事案を衆院議院運営委員会の理事会に提示することや米1月消費者物価指数(CPI)の発表を控えて動きづらい展開が予想される。

 先週のドル円は、6日(月曜日)の「雨宮現副総裁に総裁を打診」との報道を受けて、132.90円まで上昇したが、10日(金曜日)の「元日銀審議委員の植田和男氏を起用する人事」との報道を受けて、129.81円まで下落した後、131円台に戻して引けている。

 植田第32代日銀総裁が誕生した場合、FRB副議長やイスラエル中銀総裁を務めた著名経済学者スタンレー・フィッシャー氏のマサチューセッツ工科大学(MIT)の教え子として、バーナンキ第14代FRB議長、ドラギ第3代ECB総裁、ロウRBA総裁に続く4人目の中銀総裁となる。これまでの植田元日銀審議委員の見解を確認しておきたい。

■2023年2月10日
「現在の日銀の政策は適切であり、現状では金融緩和の継続が必要であると考えている」

■2022年7月日経新聞のコラム
「難しいのは、長期金利コントロールは微調整に向かない仕組みだという点である」
「異例の金融緩和枠組みの今後については、どこかで真剣な検討が必要だろう」
「拙速な引き締めは避けるべき」
「2%インフレの持続的な達成には程遠い」
「円安回避のための利上げは景気悪化招く」
「世界経済の減速が金融政策変更の重荷」

■2019年4月日経新聞のコラム
「低インフレ続きインフレ予想は低位安定」
「FRB検討の平均インフレ目標政策は疑問」
「危機対応の金融緩和が次のバブルの種に」

■2018年8月日経新聞のコラム
「長短金利操作やETF購入の副作用懸念」
「実質は極めて弱いフォワードガイダンス」
「物価低迷長引くほど対策の副作用は強く」

 植田氏は、日銀審議委員時代に、日銀の金融引き締めのトラウマとなっている「ゼロ金利政策の解除」に反対しており、当時の反対理由も確認しておきたい。
・株式市場の動向等をもう少し見極めたい
・一定の前提に基づき試算した適正な金利水準が漸くゼロ近傍に達したという状況であり、これがもう少しはっきりとプラスになるまで待ちたい
・足許のインフレ動向から判断して、「待つこと」のコストは大きくない



(山下)
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