東京為替見通し=円売りが優勢な展開か、日米欧の金融政策の乖離観測を背景に

 21日のニューヨーク外国為替市場でドル円は141円台でしっかり。日本時間夕刻の「日銀は来週27-28日の金融政策決定会合で、YCCなどの金融政策を修正する可能性は低く、大規模緩和を維持する公算が大きい」との観測報道の影響を受けた。ユーロドルは欧州中央銀行(ECB)の利上げ継続観測が後退する中、1.1108ドルまで弱含みに推移した。

 本日の東京外国為替市場では、今週開催される日米欧の金融政策決定会合での金融政策の乖離観測を背景に、円売り優勢な展開が予想される。

 25-26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、一連の引き締めサイクルでは11回目の利上げ(+0.25%⇒5.25-50%)、27日の欧州中央銀行(ECB)理事会では、9回目の利上げ(+0.25%⇒4.25%)が確実視されている。

 一方、27-28日の日銀金融政策決定会合では現状の大規模金融緩和策が維持、すなわち、世界で唯一のマイナスの政策金利(-0.10%)とイールドカーブコントロール(YCC)の現状継続が見込まれている。

 米国と日本の金融政策、インフレ率、10年債利回りは以下の通りとなっている。
   【政策金利】 【6月CPI(前年比)】  【10年債利回り】
・米国:5.00-25%   +3.0%           3.8%台
・日本:-0.1%     +3.3%           0.4%台

 日銀のYCCに関しては、フォワードガイダンスの文言「機動的に対応」、6月会合での早期見直しの検討を求める意見、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で物価見通しが現在の+1.8%から2%台へ引き上げられる可能性という新聞報道が、許容変動幅の拡大観測を台頭させていた。そして、7日の内田日銀副総裁や13日の早川元日本銀行理事によるYCCの許容変動幅の拡大を示唆する発言が、ドル円を14日に137.25円まで下落させた。

 しかし、18日に植田日銀総裁が「持続的・安定的な2%の物価目標までに距離があるとの認識に変化がなければ、粘り強く金融緩和を続ける姿勢も変わらない」と述べて、YCCの許容変動幅の拡大観測を打ち消した。さらに、21日には、日銀関係筋による「日本銀行は現時点でYCC政策の副作用に緊急に対応する必要性は乏しいとみている」との発言が伝えられ、ドル円は141.96円まで上昇し、7日の内田日銀副総裁の時の安値142.07円に迫った。

 先週末のドル円の上昇に対して、神田財務官は「緊張感を持って注視をしている。過度な変動は望ましくないという観点からあらゆる手段を排除せずに検討する」と牽制した。

 昨年9月22日のドル売り・円買い介入は、日銀決定会合で金融政策の現状維持が決定され、黒田日銀総裁(当時)が利上げに否定的な見解を示した後、ドル円が145円台まで上昇していた17時台に実施された。今回も、28日の日銀決定会合で現状維持が決定され、植田日銀総裁が金融政策の現状維持を強調した場合、ドル円は145円台に上昇する可能性が高まるため、ドル売り・円買い介入の可能性に要警戒となる。

 なお、7月18日時点(※NY市場終値:138.83円)のIMM通貨先物の非商業(投機)部門取組の円のネットショートは、9万239枚だったが、その後の141円台までの上昇により、10万枚を回復していると思われる。前回介入時、ネットの円ショートは10万枚を超えていた。


(山下)
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