東京為替見通し=ドル円、日米10年債利回りの動向に連れた値動きか

 28日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、6月米PCEコアデフレーターが予想を下回り、FRBによる現在の利上げサイクルが終了するとの観測が高まったことで、米国株相場が底堅く推移、投資家のリスク志向が改善し、141.18円まで上昇した。ユーロドルは、欧州時間発表のユーロ圏各国の4-6月期国内総生産(GDP)速報値が底堅い結果だったことや米PCEコアデフレーターが予想を下回ったことで1.1047ドルまで上昇した。ユーロ円は、米国株や日経平均先物の上昇を背景にリスク・オンの円売り・ユーロ買いで155.60円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日米の10年債利回りの動向に連れた値動きが予想される。

 28日の日銀金融政策決定会合でのイールドカーブコントロール(YCC)の柔軟化措置を受けて、東京市場は141.07円まで急騰した後、138.07円まで急落した。欧米市場では、138円台から141.18円まで上昇して高値圏で引けている。
 ドル円の変動要因の一つである日米金利差の観点からは、米10年債利回りがパウエルFRB議長が9月FOMCでの利上げ休止の可能性を示唆したことで3.9%台で伸び悩み、日本国債10年物利回りがYCCの柔軟化措置を受けて0.5%を超えていることは、ドル売り・円買い要因となる。しかし、日米株価動向の観点からは、株価上昇はリスク選好のドル買い・円売り要因となる。最近は、海外投資家が日本株の買い越しとセットで円売りを行ってきたことで、日経平均株価とドル円相場が連動してきている。

 日銀金融政策決定会合のハト派要因(円安要因)は、以下の通りとなる。
・金融政策である短期金利運用は「マイナス0.1%」に維持した
・金融政策ではない長期金利を運用する「YCC」の許容変動幅の目途は±0.5%に維持した
・展望リポートでの2024年度の消費者物価指数見通しを+1.9%へ4月の+2.0%から下方修正した
 タカ派要因(円高要因)は以下の通りとなる。
・指し値オペ水準を「0.5%」から「1.0%」を引き上げた
・展望リポートでの2023年度の消費者物価指数品見通しを+2.5%へ4月の+1.8%から上方修正した

 日本の財務省の為替政策は、ボラティリティーを抑制するとの名目で、145円以上のドル高・円安を阻止する意向が窺える。
 28日の植田日銀総裁の会見では、為替市場のボラティリティーを抑制する、との発言があり、財務省の為替政策と日本銀行の金融政策がボラティリティー抑制で歩調を合わせたことは、ドル円の145円以上の上昇を抑制する可能性に留意しておきたい。

 10時30分に発表される7月中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は48.9と予想されており、6月の49.0からの悪化が見込まれている。ネガティブサプライズだった場合は、豪ドル円の売りがドル円の売りに波及する可能性に警戒しておきたい。



(山下)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。