東京為替見通し=ドル円底堅い展開か、日経平均株価や日米10年債利回り動向に要注目

 2日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、7月ADP全米雇用報告が32.4万人増だったことで米10年債利回りが4.1221%前後まで上昇し、143.47円まで上昇した。ユーロドルは1.0918ドルまで下落した。ユーロ円は、欧州序盤の安値156.26円から157円台前半まで反発した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、明日発表される米7月雇用統計への期待感から底堅い展開が予想されるものの、日経平均株価や日米10年債利回りの動向には注視しておきたい。

 昨日早朝に発表された格付け会社フィッチ・レーティングスによる米国債格下げ(「AAA」から「AA+」)は、アジア市場ではリスク回避要因となり、株価は下落、ドル円は142円台まで下落した。しかし、ニューヨーク市場では、7月ADP全米雇用報告(前月比+32.4万人)などを材料に143円台を回復しており、2011年8月の米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)による米国債格下げショックの再現は回避された。

 しかし、ADP全米雇用報告に関しては、6月の前月比+49.7万人に対して、非農業部門雇用者数は同比+20.9万人だったことで、7月の同比+32.4万人が非農業部門雇用者数に反映されるものではなく、予断を許さない状況が続くことになる。現時点の市場予想は同比+20万人程度となっている。

 フィッチは「米国の格下げは今後3年で予想される財政状況の悪化、高水準で拡大しつつある一般政府債務負担、過去20年間の他のAAおよびAAA格付け諸国・地域と比較したガバナンス(統治)の低下を反映している」と格下げ理由を発表した。
 しかし、ムーディーズ・インベスターズ・サービスとS&Pを含む世界の格付け会社「ビッグスリー」の中で、フィッチは最小プレーヤーとみなされており、上位2社が沈黙を保っていることで、債券市場の審判は、来週の1030億ドルの米国債入札まで待たなければならないのかもしれない。

 ドル円は1日に143.55円、昨日は143.47円まで上昇しており、明日発表される米7月雇用統計の結果次第では、6月30日の高値145.07円を上抜く可能性が高まっている。
 注目ポイントは、ボラティリティー抑制を掲げている神田財務官がドル売り・円買い介入に踏み切るのか否かとなる。植田日銀総裁は、イールドカーブコントロール(YCC)の運用柔軟化を決定した後の会見で、為替市場のボラティリティー抑制を理由の一つとしたが、昨日は内田日銀副総裁も為替のボラティリティー抑制に言及していた。

 本邦財務省の為替政策と日本銀行の金融政策が念頭に置く「ボラティリティー抑制」の水準が、145円にあるのか否か、明日のニューヨーク市場で判明するのかもしれない。


(山下)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。