東京為替見通し=ドル円、日米10年債利回りに連れた値動きか

 23日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、予想を下回った8月米製造業・サービス部門PMI速報値を受けて米10年債利回りが4.18%台まで低下したことで144.54円まで下落した。ユーロドルはユーロ圏各国のPMI速報値が低調な内容だったことで1.0803ドルまで弱含んだ後、米国のPMI速報値が低調だったことで1.0870ドル付近まで反発した。ユーロ円も156.87円まで下落後157.43円付近まで反発した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、明日のジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演を控えて動きづらい展開の中、日米10年債利回りの動きに連れた値動きが予想される。

 今週のドル円は、米10年債利回りが4.36%台まで上昇した局面では146.40円まで上昇し、米債利回りの4.18%台への低下や日本国債10年物利回りの0.67%台への上昇を受けて144.54円まで反落している。
 今週の最重要イベントである明日25日23時5分からのジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演では、追加利上げの是非や利下げに転じる時期に言及する可能性、すなわち米債利回りの方向性が示唆される可能性が高いことから、144-146円のもみ合いからの上下の放れが期待できる。

 パウエルFRB議長の講演では、「自然利子率(※中立金利)」の引き上げに言及するのか否か、そしてFF金利を「より高い水準でより長く(higher for longer)」維持すると表明するのか否かが注目されている。
 「自然利子率」に関してパウエルFRB議長は、2018年のジャクソンホール講演では、「自然利子率の推定はかなり不確実である」と言及し、今年3月の議会証言でも「自然利子率の水準は、正直なところ誰も分からない」と述べており、重視していないことが示唆されている。さらに、パウエルFRB議長のスポークスマン的な役どころのウォールストリート・ジャーナル紙のFEDウォッチャー、ニック・ティミラオス記者は、21日には、中立金利引き上げ見通しというタカ派だったものの、22日は中立金利引き上げ観測を否定するハト派へ転じている。

 おそらく、パウエルFRB議長は、ブラード米セントルイス連銀総裁が「ファントム・メナス(見えざる脅威)」と示唆した自然利子率という不確実な指針を金融政策の判断には採用しないことを示唆するのではないだろうか。

 また、NY連銀のエコノミストが「パンデミック後の短期的自然利子率の進展」というレポートで短期的な中立金利の上昇の可能性に言及したものの、ウィリアムズ米NY連銀総裁は、「非常に低い自然利子率の時代が終わったという証拠はない」と、NY連銀のエコノミストの見立てに否定的な見解を述べていた。

 ドル円のテクニカル分析では、トレンド系指標(順張り指標)は、依然としてドル高の継続を示唆し、FRB議長のタカ派発言を想定している。しかし、相対力指数(RSI)などのオシレーター系指標(逆張り指標)などは、弱気の乖離(ベアリッシュ・ダイバージェンス)でのドル安トレンドへの反転を示唆し、FRB議長のハト派発言を想定している。



(山下)
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