東京為替見通し=ドル円は堅調推移が予想されるものの、円買い介入の可能性に要警戒か

 5日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが4.2697%前後まで上昇したことで147.80円まで上昇、昨年11月4日以来約10カ月ぶりの高値を更新した。ユーロドルは、8月ユーロ圏サービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値が予想を下回ったことや米金利上昇を受けて1.0707ドルまで下落した。ユーロ円は158.50円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米10年債利回りや原油価格の上昇を背景に続伸が予想されるものの、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒する展開が予想される。

 昨年の本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入は、輸入インフレという「悪い円安」論が横行する中、「ボラティリティーを抑制する」という大義名分の下で断行された。
 現状は、「悪い円安」論が後退して「良い円安」論が台頭しているものの、ボラティリティーは上昇しており、円買い介入の可能性は高まりつつある。

 ドル円は、昨年9月22日の本邦通貨当局による第1弾ドル売り・円買い介入が実施された145円台を上回り、10月24日の第3弾円買い介入が実施された147円台まで上昇している。しかし、これまでのところは、本邦通貨当局は口先介入に留まっているため、円買い介入の実施水準は、昨年10月21日に第2弾の円買い介入が実施された151円台まで引き上げられている可能性が指摘されている。
 本邦通貨当局による円安への対応は、これまで「望ましくない、注視する」という弱い口先介入に留まっており、「憂慮している、適切、断固たる措置をとる」といった介入の可能性を警告する段階ではないことも、円買い介入への警戒感を後退させている。
 
 鈴木財務相は、9月1日の閣議後の記者会見で、円安が進んでいる為替相場について「市場で決定されるものだが急激な変動は望ましくない。今後も動きを注視したい」と述べ、これまで通りの円安牽制発言に留まった。
 昨年9月22日の第1弾ドル売り・円買い介入の時は、「(行き過ぎた円安に対しては)断固たる措置をとる」と警告していた。

 昨年9月は、新型コロナの感染防止を目的にした水際対策により、円安メリットが享受される訪日外国人客によるインバウンド消費が封印されていた。そして、輸入インフレによる「悪い円安」論が流布しており、日経平均株価も2万円台後半で低迷していた。

 現在は、水際対策の撤廃によってインバウンド消費が復活しており、日経平均株価も3万3000円台で推移しており、「悪い円安」論は聞かれず、「良い円安」論が台頭しつつある。

(山下)
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