東京為替見通し=ドル円は底堅い展開だが、引き続き円買い介入の可能性には要警戒か

 8日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが4.26%台まで上昇し、日米金利差拡大への思惑から円売り・ドル買いが進み、147.87円まで上昇した。ユーロドルは、米長期金利が低下した局面で1.0744ドルまで強含んだ後、米長期金利が上昇に転じたことで、1.0697ドル付近まで反落した。ユーロ円は、欧米株価の上昇を受けて、投資家の過度なリスク回避姿勢が後退したことで158.39円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米10年債利回りや原油価格の上昇を背景に底堅い展開が予想されるものの、植田日銀総裁の発言や本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性が上値を抑える展開が予想される。

 今朝のドル円は、週末の植田日銀総裁の発言「賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた時期になれば、マイナス金利政策の解除を含め、色々選択肢がある」を受けて、146.67円まで下落した。

 ドル円の高値は、5日が147.80円、6日が147.82円、7日が147.87円、8日が147.87円までと148円台の手前までの堅調推移が続いており、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の出方を窺う展開となっている。
 ドル円のテクニカル分析では、234日サイクルの9月12日頃に、148.59円~148.77円を目処とする高値を付けて、反落するシナリオが想定されている。また、オシレーター系指標(逆張り指標)は、価格の高値更新(145.07円⇒147.87円)に逆行する「弱気の乖離(ベアリッシュ・ダイバージェンス)が出現しており、高値反落の可能性を示唆している。

 先週6日、神田財務官は、急激な為替変動が続いた場合は「あらゆる選択肢」を排除せず、適切に対応するとの見解を示した。昨年9月22日の本邦通貨当局による145円台での第1弾ドル売り・円買い介入の前には、神田財務官は「どんな場合でも、あらゆるオプションがアベイラブル(利用可能)であって、何かを排除しているわけではない」と述べていた。すなわち、「あらゆる選択肢、オプション」という介入実施の警告が発せられたのかもしれない。
 8日には、鈴木財務相が「為替市場の動向を高い緊張感を持って注視。過度な変動にはあらゆる選択肢を排除せず対応する」と述べたが、昨年9月22日の第1弾ドル売り・円買い介入の時は、「(行き過ぎた円安に対しては)断固たる措置をとる」と警告していた。

 現状のドル高・円安相場に関しては、昨年のような輸入インフレという「悪い円安」論も聞かれず、三者会合(財務省・金融庁・日銀)やレートチェックなども聞こえてこないため、円買い介入の実施水準が150円台に引き上げられているのではないか、との指摘もあるものの、予断を許さない状況が続くことになる。

 神田財務官が言及した投機筋に関しては、IMM通貨先物の非商業(投機)部門取組は、9月5日時点で97,136枚(x1250万円=1兆2142億円)となっていた。昨年のドル売り・円買い介入前の円売り持ち高は、10万枚程度(=1兆2500億円)だったことで、神田財務官はもうしばらく待つつもりなのかもしれない。


(山下)
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