東京為替見通し=日銀結果次第で乱高下は必至、昨年と同様に会合後の円買い介入にも要警戒

 海外市場でドル円は、アジア時間に一時148.46円と年初来高値を付けたことで、利食い売りなどが目立った。米国株相場が軟調に推移したこともリスク・オフの円買いを誘い、24時過ぎには一時147.32円と日通し安値を更新した。ユーロドルは一時1.0625ドル付近まで弱含んだが、ドル円の下落をきっかけに対ユーロでもドル売りが広がると、1.0674ドルまで買い戻された。

 本日のドル円は、日銀政策決定会合次第の動きとなる。政策金利自体の変更予想は無いが、見解などについて市場ではさまざまな予測・憶測が出ている。マイナス金利解除を打ち出す方針を期待する声や、それを否定する声。また、イールドカーブコントロール(YCC・長短金利操作)の柔軟化を更に目指す声はあるが、YCCの修正・削除により利上げが規定路線化するリスクを指摘する声がある。他にもYCCの年内撤廃を匂わす、YCCを残しゼロ金利解除を進める方針を示す、10月の経済見通し公表時に合わせて変更をするなど、様々な憶測が出回っている。全く方針が変わらないことを含め、どのような結果が出た場合でもドル円を中心とした円相場は激しく動くことが予想される。

 仮に主だった意見や、総裁の会見で市場の一部が期待するような金融政策の正常化へのヒントがなく、円安に傾いた場面でも警戒を怠らないようにしたい。

 昨年の9月22日には日銀が金融政策の現状維持を発表すると円売りが加速した。その後の当時の総裁だった黒田氏の会見では「当面は金利を引き上げない」と明言したことで、さらに円安が進行。しかし、このタイミングを見計らったように、円買い介入を実施された。当時のドル円の上昇時の水準は145.90円近辺(ユーロ円も143円台)だったことを考えると、現行の水準の方が円安水準である。

 また、20日にはイエレン米財務長官が「日本の円介入に関する見解は状況次第」「円のボラティリティを滑らかにする必要を理解」と発言している。FOMCを前に出たこの発言は、FOMCか日銀政策決定会合後に円が急落(ドルが急騰)した場合には、ボラティリティ抑制のために為替介入を行うことを本邦当局者が事前に財務長官にお伺いを立てたのでは、との声もある。この発言が伝わった後に為替介入の権限を司っている神田財務官も為替相場について、米当局とは日ごろから極めて緊密に意思疎通を取っていると述べ、「過度な変動が好ましくないという認識を共有」「行き過ぎた変動に対して適切な対応をあらゆる手段を排除せずに取る」と発言しており、米国の了承を受けて臨戦態勢が整ったとの指摘もある。ドル円が上値トライを仕掛けた時には、為替介入の実弾が出る可能性もあることには留意したい。

 なお、本日の日銀政策決定会合を前にして、8時半には本邦の8月全国消費者物価指数(CPI)が発表される。昨日、イングランド銀行(BOE)が金融政策委員会(MPC)の結果を発表したが、BOEは前日発表された8月CPIが低下したことで、政策金利を据え置いた。日銀当局者が8月CPIを見て見解を変える可能性も否定できないことで、CPIの結果にも注目したい。

(松井)
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