東京為替見通し=ドル円上値重いか、下院議長解任など米国リスク拡大
海外市場でドル円は、8月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が予想を大幅に上回ったことが伝わると節目の150円を突破し、一時150.16円と昨年10月21日以来の高値を更新した。そのあとは政府・日銀による為替介入への警戒が高まる中、まとまった規模の円買いのフローが入ったことで一時147.43円まで急落したが、すぐに149円台前半まで持ち直すなど神経質な値動きとなった。ユーロドルは米長期金利が上昇すると全般ドル買いが進行し、一時1.0448ドルと昨年12月7日以来の安値を付けた。
本日のドル円は乱高下が予想されるが、上値は限定的になるか。昨日に介入と思われる動きが見受けられた中で、あえて上値をトライするとは考えにくい。市場もいずれは水準に慣れてくるだろうが、まだ24時間も経たない状況でドル円を積極的に買い上げる地合いではないだろう。
ドル円の買い要因は、米10年債利回りが2007年8月以来となる4.80%台まで上昇し、対円だけでなくドルが全面高となっていることだ。今週に入り、すでに4人の米連邦準備理事会(FRB)関係者が、「高金利の長期据え置き(Higher for longer)」について言及している。ドルインデックスも年初来高値更新し続けている。
一方で、米金利の急上昇による副作用(ドル円の売り要因)も複数表面化してきている。米長期金利の急ピッチの上昇を嫌気し、株式市場が軟調な動きを見せていることは、リスク回避の動きを促す可能性がある。
また、金利の急騰で金融機関に対する不安が再び注目され、今年3月のシリコンバレー銀行の破綻と同様なケースが今後も見受けられるとの声が高まっている。金利上昇は住宅ローンからクレジットカード、個人ローンに至るまで広範に影響を及ぼす。7-9月期にかけて銀行の36%以上が融資基準を厳格化したと報告しているが、これは過去においては景気後退を示す水準との調査結果も出ている。今後の米景気の停滞観測の高まりには要警戒となる。
そして、最もサプライズとなったのが、日本時間早朝に、米下院共和党トップのマッカーシー下院議長が解任されたことだ。
9月末に米上下両院で「つなぎ予算」が可決したが、マッカーシー氏は共和党強硬派の要求を取り下げ、民主党の案に歩み寄ったことが可決要因だった。しかし、ゲーツ下院議員を中心に共和党強硬派は「議長解任」動議を進めた。これに対してマッカーシー議長も「やれるならやってみろ(Bring it on!)」と応酬。一方で、アリゾナ州選出で強硬派の共和党クレーン議員も「やろうじゃないか!(Let's roll!)とX(旧ツイッター)で言い返すなど過熱した状態だった。しかし、これだけ早期に解任が決まるとは、市場だけでなく米メディアも驚きを示した。
下院議長交代で警戒しなくてはならないのは、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが、「米政府機関が閉鎖されれば米国の信用格付けにネガティブに反映される」と警告を出していることだ。共和党強硬派が下院で力を得ることは、11月17日が期限となっている暫定予算が、次回は民主党に歩み寄る姿勢を見せる可能性が低くなったということでもある。共和党強硬派=MAGA=トランプ支持、ということもあり、大統領予備選挙を控えて、民主党と共和党の争いが繰り返され、米国売りになる可能性が高まりそうだ。
アジア時間は、主だった経済指標の発表予定は無いが、日本時間10時よりNZ準備銀行(RBNZ)の金融政策委員会(MPC)が政策金利を発表する。また、MPCは政策決定に至った内容を簡易的に説明する「金融政策レビュー(Monetary Policy Review)」と、詳細にわたって説明する「金融政策声明(Monetary Policy Statement)を交互に発表しているが、今回は前者が発表される。ニュージーランドでは今月14日に総選挙が行われることで、選挙前に政策選挙を変更することは通常は考えにくく、据え置き予想となっている。RBNZは5月に政策金利を5.5%に引き上げた時点で利上げのサイクルはほぼ終了したとの見解を示したが、4-6月期の消費者物価指数(CPI)や国内総生産(GDP)が予想比を上振れたことで、今後の再利上げの可能性も指摘されている。レビューで利上げへのシグナルが出るかは確かめる必要がありそうだ。
(松井)
本日のドル円は乱高下が予想されるが、上値は限定的になるか。昨日に介入と思われる動きが見受けられた中で、あえて上値をトライするとは考えにくい。市場もいずれは水準に慣れてくるだろうが、まだ24時間も経たない状況でドル円を積極的に買い上げる地合いではないだろう。
ドル円の買い要因は、米10年債利回りが2007年8月以来となる4.80%台まで上昇し、対円だけでなくドルが全面高となっていることだ。今週に入り、すでに4人の米連邦準備理事会(FRB)関係者が、「高金利の長期据え置き(Higher for longer)」について言及している。ドルインデックスも年初来高値更新し続けている。
一方で、米金利の急上昇による副作用(ドル円の売り要因)も複数表面化してきている。米長期金利の急ピッチの上昇を嫌気し、株式市場が軟調な動きを見せていることは、リスク回避の動きを促す可能性がある。
また、金利の急騰で金融機関に対する不安が再び注目され、今年3月のシリコンバレー銀行の破綻と同様なケースが今後も見受けられるとの声が高まっている。金利上昇は住宅ローンからクレジットカード、個人ローンに至るまで広範に影響を及ぼす。7-9月期にかけて銀行の36%以上が融資基準を厳格化したと報告しているが、これは過去においては景気後退を示す水準との調査結果も出ている。今後の米景気の停滞観測の高まりには要警戒となる。
そして、最もサプライズとなったのが、日本時間早朝に、米下院共和党トップのマッカーシー下院議長が解任されたことだ。
9月末に米上下両院で「つなぎ予算」が可決したが、マッカーシー氏は共和党強硬派の要求を取り下げ、民主党の案に歩み寄ったことが可決要因だった。しかし、ゲーツ下院議員を中心に共和党強硬派は「議長解任」動議を進めた。これに対してマッカーシー議長も「やれるならやってみろ(Bring it on!)」と応酬。一方で、アリゾナ州選出で強硬派の共和党クレーン議員も「やろうじゃないか!(Let's roll!)とX(旧ツイッター)で言い返すなど過熱した状態だった。しかし、これだけ早期に解任が決まるとは、市場だけでなく米メディアも驚きを示した。
下院議長交代で警戒しなくてはならないのは、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが、「米政府機関が閉鎖されれば米国の信用格付けにネガティブに反映される」と警告を出していることだ。共和党強硬派が下院で力を得ることは、11月17日が期限となっている暫定予算が、次回は民主党に歩み寄る姿勢を見せる可能性が低くなったということでもある。共和党強硬派=MAGA=トランプ支持、ということもあり、大統領予備選挙を控えて、民主党と共和党の争いが繰り返され、米国売りになる可能性が高まりそうだ。
アジア時間は、主だった経済指標の発表予定は無いが、日本時間10時よりNZ準備銀行(RBNZ)の金融政策委員会(MPC)が政策金利を発表する。また、MPCは政策決定に至った内容を簡易的に説明する「金融政策レビュー(Monetary Policy Review)」と、詳細にわたって説明する「金融政策声明(Monetary Policy Statement)を交互に発表しているが、今回は前者が発表される。ニュージーランドでは今月14日に総選挙が行われることで、選挙前に政策選挙を変更することは通常は考えにくく、据え置き予想となっている。RBNZは5月に政策金利を5.5%に引き上げた時点で利上げのサイクルはほぼ終了したとの見解を示したが、4-6月期の消費者物価指数(CPI)や国内総生産(GDP)が予想比を上振れたことで、今後の再利上げの可能性も指摘されている。レビューで利上げへのシグナルが出るかは確かめる必要がありそうだ。
(松井)