東京為替見通し=ドル円 、上値重い展開か 本日からパウエルFRB議長の議会証言控えて

 20日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、予想を上回った5月米住宅着工件数・建設許可件数を受けて141.75円付近まで買い戻された後、米長期金利の低下に伴う円買い・ドル売りや米国株安に伴うクロス円の下落につれて141.21円まで反落した。ユーロドルは欧州債利回りの低下などで1.0893ドルまで下落した。ユーロ円は米株価の下落を背景にリスク回避の円買い・ユーロ売りで154.05円まで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、本日と明日に予定されているパウエルFRB議長の議会証言を控えて米10年債利回りが3.7%台に低下していることで、上値の重い展開が予想される。

 ドル円は昨日142.25円まで続伸し、三角保ち合いの最小上値目標値である142.21円を上回り、昨年11月21日の高値に面合わせした。この上の抵抗水準は、昨年11月11日の高値142.48円、151.95円(2022年10月21日高値)から127.23円(2023年1月16日安値)までの下落幅のフィボナッチ・リトレースメント61.8%戻しの142.51円が目安となっている。

 本邦通貨当局は、昨年9月と10月にボラティリティー(過度な変動)を抑制するという名目で、ボリンジャー・バンド+2σ付近でドル売り・円買い介入を断行しており、本日(※+2σは141.94円付近)も引き続き警戒していくことになる。昨日の142円台では、鈴木財務相が「為替動向を注視。必要であれば適切に対応」と述べ、西村経産相が「過度な変動・投機的な動きはしっかりと注視」と述べ、「注視」の段階に留まっている。本邦通貨当局がドル売り・円買い介入に踏み切る場合は、「断固たる措置」という警告が発せられるため、鈴木財務相や神田財務官の発言内容を見極めつつ、「神田シーリング」を探っていくことになる。

 パウエルFRB議長は、本日、米下院金融サービス委員会で金融政策に関する半期に一度の証言を行い、金利の道筋を巡る米連邦準備理事会(FRB)と市場の乖離を明確化することになる。注目ポイントは、ドット・プロット(金利予測分布図)が示唆する年内2回(0.25%x2)の利上げ見通しと「フェドウオッチ」が示唆する7月FOMCでの5.25-50%へ利上げのみの乖離に対する見解となる。

 米国5月の消費者物価指数(CPI)は前年比+4.0%まで伸び率が鈍化しているが、前月比+0.1%が12月まで続いたと仮定した場合、12月のCPIは前年比+2.2%まで低下していく。ドット・プロットが2023年末のFF金利の予想中央値を5.60%(※FF金利:5.50-75%)まで引き上げているにも関わらず、米2年債利回りは4.7%弱、米10年債利回りは3.7%強で低迷している。市場は、2回の利上げ見通しを信じず、長短金利逆転(逆イールド)を続けることで、リセッション(景気後退)到来によるFEDピボット(FRBの利下げ転換)に賭けているように思われる。
 現状の金利とインフレ動向は以下の通りになっている。
・FF金利誘導目標:5.00-25%(2023年末の見通しは5.50-75%)
・米2年債利回り:4.7%弱
・米5月消費者物価指数(CPI):4.0%
・米10年債利回り:3.7%強

 米2年債と10年債の逆イールドは、過去40年にわたり常に景気後退の前兆となってきた。10年物国債と3カ月物財務省証券(TB)の逆イールドで12カ月先の景気後退入りを予測するニューヨーク連銀のモデルは、その確率が1980年代以来初めて70%になった、と警鐘を鳴らしている。



(山下)
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