週間為替展望(豪ドル/ZAR)-豪ドル、インフレ高進も株安が重し

◆豪ドル、CPI上振れで3年債利回りは2011年以来の水準まで上昇
◆豪ドル、中東情勢の悪化懸念によるリスク回避の動きが重しに
◆ZAR、米金利動向と中期予算発表に注目

予想レンジ
豪ドル円 93.00-96.50円
南ア・ランド円 7.60-8.10円

10月30日週の展望
 豪ドルは神経質な動きとなりそうだ。今週発表された、7-9月期の豪消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回り、豪準備銀行(RBA)が重要視する、(総合品目の中から最も価格変動の大きい30%の品目を除いた)トリム平均値も予想を上振れた。この結果を受けて豪3年債利回りは、2011年以来となる4.3%台まで上げ幅を拡大。また、オーバーナイト・インデックス・スワップから算出した次回の利上げ確率は一時7割を超えた。来週11月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での金利据え置き観測が高まる中で、RBAの利上げ期待が対ドルでの支えになる。

 ただ、下値リスクにも依然として警戒は必要だ。CPIの翌日に議会証言を行ったブロックRBA総裁は「CPIの上昇は想定内」と発言するなど、市場ほどインフレへの警戒感は強くない。また、中東でイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が避けられない状態であることも懸念材料。特に、イスラエルがガザへ本格的な地上侵攻を実行した場合には、イランが参戦する可能性もあり、戦火が拡大し原油急騰や株価がさらに下げ幅を拡大する可能性が高くなるだろう。戦火の拡大は、リスク回避の動きに敏感な豪ドルの重しになる。

 なお、来週の経済指標では30日に9月小売売上高、11月1日に住宅建設許可件数、11月2日に貿易収支が発表予定。また、隣国のニュージーランドからは11月1日にNZ準備銀行(RBNZ)の金融安定化レポートが公表されるほか、7-9月期雇用統計が発表される。雇用統計は失業率や雇用者数増減だけでなく、平均賃金や民間賃金にも注目したい。

 南アフリカ・ランド(ZAR)は上値が重そうだ。国外要因としてはFOMCとその後に行われるパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見が重要になる。ここ最近のZAR相場は米金利動向に左右されており、FOMC前後は対ドルで激しく動くことが予想される。南アのイベントは来週30日に9月財政収支、31日に貿易収支が発表されるが、最も重要なのが11月1日の中期予算政策声明(MTBPS)の発表。財政がひっ迫しており、緊縮財政案が公表されるとの予想だが、労働組合は緊縮財政に対してストライキを示唆している。来年の選挙を控え、財政バランスを無視し、国民受けの良い政策を発表した場合はZAR売りに反応する可能性が高い。なお、今週はハト派だったナイドゥ南ア準備銀行(SARB)副総裁が辞任を表明した。ZARの支えにはなるものの、すでに市場は11月の利上げを織り込みつつあることから、影響は限定されそうだ。

10月23日週の回顧
 豪ドルは対円では横ばい、対ドルでは軟調だった。7-9月期豪CPIが予想を上回ると豪ドルに買いが集まった。ただ、その後はRBA総裁のハト派寄りの議会証言や世界的な株安の動きで戻り売りが優勢となった。対ドルでは昨年11月以来となる0.62ドル後半まで弱含んだ。ZARはもみ合いだった。週前半は米金利が上昇基調を辿ると、ドル買い・ZAR売りが優勢になりZARの頭を抑えた。しかし、週後半は買い戻しも入り行って来いとなった。(了)
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