東京為替見通し=円独歩安の展開変わらず、実弾介入以外の日本売り・円売り回避できずか

 海外市場ではドル円は、10月米卸売物価指数(PPI)が予想を下回ったことが伝わると円買い・ドル売りが先行し一時150.06円まで値を下げた。ただ、同時に発表された10月米小売売上高や11月米ニューヨーク連銀製造業景気指数が予想を上回ったことから、そのあとは一転ドルが買い戻され151.42円と日通し高値を更新した。ユーロドルは24時前に一時1.0832ドルと日通し安値を更新した。

 本日のドル円も底堅い動きとなりそうだ。対ドルでは昨年高値には届いていないが、多くの通貨で円安進行の勢いが留まる気配はない。対スイスフランでは170円台まで円安が進み、円の過去最安値を更新したほか、多くの通貨で10年振り前後の円安水準まで円は売られている。昨日発表された本邦の7-9月期国内総生産(GDP)も市場予想を下回り、日本経済の落ち込みが深刻になっていることも円安要因だ。GDPデフレーターは前年比で+5.1%まで上昇し、インフレが加速していることで本邦の金利高を促す要因はあるものの、18カ月も実質賃金がマイナス、実質消費支出も7カ月連続でマイナスとなっていることで、金利引き上げによる景気の更なる落ち込みを懸念する声が大きく、大幅な利上げもできない状況だ。それにもかかわらず、岸田政権の景気刺激策には失望の声も多く、日本売り・円売りを避けられない相場展開が続くと予想される。

 円安を阻止できる唯一の方法は、本邦当局者による実弾介入のみとなっている。しかしながら、14日に鈴木財務相は為替について万全の対応を行うと発言しつつも、「円安のマイナス面を緩和、プラス面を最大化が重要」「円安はプラスとマイナス双方に様々な影響がある」と述べていることで、円買い介入に二の足を踏むのではないかという憶測もある。今後も当局者の発言を注意深く読み取る必要があるだろう。
 
 本日は本邦から10月貿易統計、9月機械受注、9月第三次産業活動指数など複数の経済指標が発表される。本邦の指標での市場の反応は限定的だが、円売り要因となる結果が出た場合には要注意となるか。

 アジア時間でのドル円以外では、本日は豪州から10月雇用統計が発表されることで豪ドルの動きが注目される。なお、豪ドル円は早朝に、2014年12月以来の水準まで豪ドル高・円安が進んでいる。

(松井)
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