東京為替見通し=ドル円は底堅い動きか、FRB要人の利下げ慎重見通しが支えに

 昨日の海外市場でドル円は、連邦準備理事会(FRB)高官らが早期利下げに慎重な見方を示す中、米長期金利の指標である米10年債利回りが4.45%台まで上昇すると円売り・ドル買いが優勢となり156.30円まで上昇した。ユーロドルは1.0854ドルまで弱含んだが、レンジは限られた。

 本日のドル円相場は引き続き底堅い動きになりそうだ。今月に入り米国で最も注目された2つの経済指標(4月雇用統計と同月消費者物価指数(CPI))がそれぞれ弱い結果となり、市場では今年2回の利下げ期待が高まった。しかしながら、CPI発表後の15日以後も、米連邦準備理事会(FRB)高官からは、利下げに対して慎重な見方が相次いでいる。先週は、ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、ボウマンFRB理事、バーキン米リッチモンド連銀総裁、メスター米クリーブランド連銀総裁など今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を有するメンバーに、グールズビー米シカゴ連銀総裁などが利下げへの慎重姿勢を示した。そして、昨日相次いで行われたFRB高官の講演でも下記のように、利下げに対しての慎重発言が出ている。
・ボスティック米アトランタ連銀総裁「インフレ目標の2%に到達すると確信できるまで、まだ時間がかかる」
・バーFRB副議長「第1四半期のインフレには失望、金融緩和に必要な確信をもたらさなかった」
・ジェファーソンFRB副議長「ディスインフレの進展鈍化が長期にわたるかどうかを判断するには時期尚早」
・デイリー米サンフランシスコ連銀総裁「インフレがどのような方向に向かうかを判断するには時期尚早」
 このように、すべてのFRB高官からここ最近は口裏を合わせたかのように、インフレの継続的な低下に懐疑的な声が続いている。依然として9月での利下げ予想は6割を超えているが、今後のデータを精査するまで利下げを過大に期待するリスクは高く、ドル相場も大きく崩れにくいと思われる。

 また、ドル買いだけではなく、円売り要因が多いこともドル円を支えている。昨日、本邦10年債利回りは2013年以来の水準まで上昇したが、市場では過度に日銀が利上げを出来る状況ではないと認識している。ここ最近の本邦の経済データが弱く、消費が低迷している中での利上げは副作用が大きい。また、与党自民党にとっても、週末に行われた小田原市長選で現職市長が大敗するなど、支持率の低下に歯止めがかからない。今後の選挙を控え、国民の支持を得にくい利上げなどを積極的に推し進めるのも難しいだろう。
 なお、本日も本邦だけではなく米国からも主だった経済指標の発表予定がないことで、ドル円が大きくレンジを広げるのは難しそうだ。

 円以外の通貨ではオセアニア通貨の値動きに注目したい。昨日NZドル円は95.62円まで強含み2007年以来の高値を更新。豪ドル円も104.57円までじり高となり、4月29日付けた2013年以来の高値に近づいた。本日は5月6-7日に開かれた豪準備銀行(RBA)理事会の議事要旨が公開され、明日はNZ準備銀行(RBNZ)の金融政策委員会(MPC)が政策金利を発表する。両中銀の政策スタンスに変化があれば、オセアニア通貨はともにボラタイルな値動きになりそうだ。

(松井)
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