東京為替見通し=ドル円、日銀金融政策決定会合の結果を見極める展開

 13日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、5月米卸売物価指数(PPI)が予想を下回ったことで156.59円まで下落後、157.27円付近まで買い戻された。ユーロドルは5月米PPIを受けて1.0816ドルまで上昇後、欧州株相場の下落を受けて1.0733ドルまで下落した。ユーロ円は欧州の政局不安への警戒感から168.28円まで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日銀金融政策決定会合での金融政策正常化の度合いを見極めることになる。

 日銀金融政策決定会合での決定内容として、政策金利(無担保コールレート)は、0.00-10%で据え置きか、追加利上げ(+0.15%~+0.25%)、国債買い入れは、月額6兆円規模で据え置き、5兆円程度まで減額、4兆円以下に減額、などのパターンを想定しておきたい。

 タカ派的なシナリオは、植田日銀総裁、内田日銀副総裁、安達日銀審議委員が示唆していたように、追加利上げ(+0.15%~+0.25%)と国債買い入れオペの4兆円以下への減額となる。このシナリオの場合のドル円は、155円以下への下落が予想される。
 植田日銀総裁は「長期金利は金融市場で形成されることが基本になる」と述べて、国債買い入れオペの撤回を示唆していた。
 内田日銀副総裁は「デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉は視野に入った」と述べていた。
 安達日銀審議委員は「持続的・安定的な物価上昇が2%を上回る可能性がより強まっている場合には、利上げを行うことで金融緩和度合いを調整するペースを早める必要性があるかもしれません」と述べていた。英訳された安達日銀審議委員の見解は、円安抑制措置として、為替介入から利上げ前倒しへのシフトと解釈されたらしい。
 
 ハト派的なシナリオは、中村日銀審議委員が示唆していたように、金融政策の現状維持となる。この場合のドル円は、158円以上への上昇が予想されるものの、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒することになる。
 ハト派的シナリオの背景には、4月の「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」の3指標が前年比伸び率2%を下回ったこと、4月のコアCPIは前年比+2.2%に留まっていたこと、25カ月連続して実質賃金がマイナスであり、1-3月期GDPがマイナス成長のままであることが挙げられる。
 
 なお、2022年9月22日の日銀金融政策決定会合後の記者会見で、黒田日銀総裁(当時)は、「当面金利を引き上げるようなことはない」と述べ、当日ドル円が145円台に上昇した局面で、本邦通貨当局はドル売り・円買い介入に踏み切った。
 2024年4月26日の日銀金融政策決定会合後の記者会見で、植田日銀総裁は、円安について「基調的な物価上昇率に、今のところ大きな影響を与えているわけではない」と述べ、29日にドル円が160円台まで上昇した局面で、本邦通貨当局はドル売り・円買い介入に踏み切った。


(山下)
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