東京為替見通し=投機的ではない円安トレンド継続、豪ドルはRBA声明文に要警戒

 昨日のドル円は、米長期金利の上昇とともに円売り・ドル買いが先行し157.96円まで上昇した。もっとも、米長期金利が上昇幅を縮めると157.68円付近まで下押しする場面があった。ユーロドルは前週に大幅下落した仏株価指数が反発すると、投資家の過度なリスク回避姿勢が和らぎ1.0738ドルまで買われた。

 本日のドル円相場は引き続き底堅い動きか。先週末の日銀政策決定会合で7月の国債購入の減額方針が示されたのにもかかわらず、円買いへの反応は限られたままになっている。日銀が次回会合の手札を見せてしまったことで、市場では余程のサプライズがない限りは、7月の政策決定会合でも円買いに動きにくくなってしまったと思われる。

 また、国内からの円売りが継続的に出ていることも、円安トレンドの要因。新NISA(少額投資非課税制度)を通じたものを含め、海外投資のための円売りシフトが止まらず、本日の日経新聞朝刊にも記載されている通りに、家計からの円売りはすでに前年を超えている。
 国が円安を促す政策(新NISA)を導入したのにもかかわらず、円安に動くと円買い介入を行ったのは支離滅裂ともいえ、他国(特に米国)から為替介入への拒否反応が出るのは至極当然ともいえる。円安傾向は、国外投資に対しては新NISAの対象を外さない限りは、今後もスピードは緩やかになったとしても「投機的な動き」ではない円売りが今後も続きそうだ。

 本日は本邦からは市場を動意づけるような主だった経済指標の発表などがないことで、円相場は需給的な動きが中心になるだろう。ただし、油断をしているときに相場が急変してしまうこともあることで、水準的にも再びドルが上値をトライしにいくようなことがあれば警戒したい。
 
 円相場はイベント不足で動きにくいが、本日は豪ドルの動向には要注目。昨日から行われている豪準備銀行(RBA)理事会が、本日政策金利などを発表する。9割以上のエコノミスト予想は、RBAは第3四半期までは政策金利を据え置きと予想している。オセアニア4大銀行のうち3行(ウェストパック、NBA、CBA)は11月、ANZは先週予想を後倒し、来年2月の利下げ予想に変更している。よって、政策金利は4.35%への据え置きで無風となるだろう。
 しかしながら、同時に発表される声明文の内容次第で豪ドルは動意づきそうだ。前回5月の理事会では「インフレリスクが高まっていることを踏まえ、利上げを検討していた」ことが明らかになっている。そして、先月5月29日に発表された4月の月次消費者物価指数(CPI)は昨年11月以来の水準となる3.6%まで上昇し、RBAのインフレ目標レンジ(2-3%)から再び遠ざかった。データ的にもインフレリスクが証明されたことで、更にタカ派的な声明が発表されるかが注目される。

(松井)
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