東京為替見通し=東京時間は円売り優勢が続くか、月末フロー・東京CPIに注目

 昨日の海外市場でのドル円は、4-6月期米国内総生産(GDP)改定値が上方修正されたことが分かると、米長期金利の上昇とともに全般ドル買いが先行し145.55円まで上昇した。ただ、ロンドンフィキシングを通過すると徐々に上値が重くなり、144.73円付近まで下押した。ユーロドルは8月独消費者物価指数(CPI)速報値が前月比で低下したことが分かるとユーロ売りが先行。4-6月期米GDP後には1.1056ドルまで下値を広げた。

 本日のドル円は神経質な動きになりそうだ。連日東京市場に入るとドル買い・円売りが優勢となっている。円売りが進む要因としては、アベノミクス相場が始まってから長期間にわたる円キャリートレードが進み、円ショートにしておけば容易く収益を上げることが出来る相場展開に東京勢が慣れてしまっていることがあげられる。特に「ミセス・ワタナベ」と称される個人のFX取引では、スワップポイントも得ることが出来る円売り志向が依然として根強い。今月5日の急落で一部は円ショートが強制的に閉じられたものの、いったん相場が落ち着くと円キャリーを再開し、東京時間の底堅さにつながっている。

 昨日のドル円は米経済指標の結果に大きく反応したが、米金利動向は比較的落ち着いている。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、9・11月の利下げ幅予想もさほど変化はない。米系の今後の金利に関する見方も変わらず、中長期の米系ファンド勢のドル売り姿勢に変化がないことで、米系の売り・本邦の買いの相場は当面変わらないか。

 本日警戒しなくてはならないのは月末・5・10日(ゴトー日)ということもあり、東京仲値の値決めを中心に神経質な動きになりやすいこと。ここ最近は仲値の値決めに近づくとじりじりとドル買い・円売りが進むが、本日も仲値前後の動きには注意したい。また、ロンドン開始後やロンドンフィキシングでも、相当なフローが入ってくることも予想され、本日はロンドンフィキシングが終わるまでは経済指標やニュースに逆行する動きが起きるリスクもあるだろう。

 経済指標では、本邦から複数の指標が発表されるが、8月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)が一番注目されそうだ。先週発表された7月の全国CPIは生鮮食料品とエネルギー除くコア指数は前月の2.2%から1.9%へと低下した。同様に日銀が注目する刈込平均値等の基調インフレも同様に前月より低下した。もっとも、これらの結果はほぼ市場予想通りの結果だったこともあり、市場が今後の日銀の再利上げに対する予想には変化がない。本日発表される東京都区部のコアCPIは全国CPIの前哨戦とされるが、前月同様に2.2%と横ばい予想になっている。予想より結果が大幅に下振れた場合は、再利上げの声が遠のき円売りに傾く場面もあるだろう。しかしながら、7月の利上げ時の前は弱い経済指標の発表が続いたのにもかかわらず、利上げに踏み切ったことを考えれば、余程予想と結果に乖離がない限りは円安地合いに戻るのも難しそうだ。

 なお、オセアニア通貨にも引き続き注目。経済指標では早朝にNZから住宅許可建設指数が発表された以外は、豪州から7月の小売売上高が発表される。昨日は通常は反応が鈍いNZのANZ企業信頼感が10年超振りの好結果だったことで、NZドルを中心にオセアニア通貨が大きく反応した。豪小売売上高も予想と結果に開きがあった場合は、再びオセアニア通貨が動きそうだ。また、昨日はドイツのCPIは低下予想だったものが更に弱い結果となり、前月比ではマイナスに転じた。ドイツからは先週発表されたPMIに続き低調な経済指標の発表が相次いでいることで、9月の欧州中央銀行(ECB)の利下げ確率がさらに高まった。中央銀行の金融政策では米・ユーロ圏・NZは利下げ期待が高く、日本は利上げ期待、豪・英は当面は据え置き予想となるなど、各国の政策金利を巡るスタンスの違いが中長期的に為替相場に影響をより与えていくことになるか。


(松井)
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