東京為替見通し=ドル円、上値重いか 本邦CPI刈込平均値・RBAのインフレ指標に要注目

 昨日の海外市場でのドル円は、日本時間夕刻に一時144.68円と4日以来の高値を付けた。ただ、NY入り後は米消費者信頼感指数の下振れをきっかけに米長期金利が低下すると全般ドル売りが活発化し、143.11円まで弱含んだ。ユーロドルはリスク・オンのユーロ買い・ドル売りが先行し、米長期金利が低下すると1.1181ドルまで上昇した。

 本日のドル円は5・10日(ゴトー日)ということもあり、東京仲値の値決めまでは下値が支えられるだろう。しかしながら、昨日夕刻のドル買いで目先のドルショートが切れたと想定されることから、徐々に上値を切り下げる展開になるか。

 先週の日銀政策決定会合後の会見に続き植田日銀総裁は、昨日の大阪経済4団体共催懇談会での挨拶でも「政策判断にあたり時間的な余裕がある」と述べ、早急な追加利上げを否定した。7月の会合後の会見に植田総裁が思っていた以上に市場が大きく動意づいたことや、今週末に控えている自民党総裁選への忖度などの理由もあり、利上げを急がない姿勢を見せているが、市場はすでに利上げペースの鈍化は織り込んだと思われる。よって、ここからは日米の経済指標により、どちらが政策変更のペースと幅を先に調整していくかを占うことになりそうだ。

 その中で本日注目されるのは、日銀から発表される8月全国消費者物価指数(CPI)の基調的なインフレ率を捕捉するための指標(刈込平均値、最頻値、加重中央値)。基調的なインフレ率はCPI公表日の2営業日後の14時を目途に公表され、7月は前年比でそれぞれ、刈込平均値が1.8%、加重平均値は1.1%、最頻値が1.5%と6月より低下した。

 一部では刈込平均値に対する日銀の注目度が高いとされ、同値が前月同様に伸びの鈍化が確認されるか、もしくは再び2%を超えるかに特に注視したい。基調的インフレが再び上昇基調にある場合は、植田総裁が昨日「基調的な物価上昇率が見通しに沿って高まっていくならば、そうした動きに応じて、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当と考えている」と述べたように、再び早めの金融調整(利上げ)観測が高まるだろう。一方で引き続き2%を下回った場合には、植田総裁がここ最近述べているように「時間的な余裕」を持ち、当面は政策金利を据え置くことになりそうだ。

 また、引き続きアジア通貨に対してドルが弱含んでいることにも注目したい。昨日はリバースレポ金利を引き下げた中国の通貨(元)を含め、対ドルでアジア通貨は全面高となった。タイバーツ、マレーシアリンギ、インドネシアルピア等、多くの通貨で年初来高値(ドルの年初来安値)を更新している。海外ファンドは円も同じアジア通貨として取引をするため、円安進行時はファンドがドル売り・円買いを積極的に仕込む可能性もあるだろう。

 ドル円以外では、本日は豪州の8月CPIが発表されることで豪ドルが再び動意づきそうだ。市場ではCPIヘッドラインは前年比で前回の3.5%から2.7%への低下が予想されている。また、豪準備銀行(RBA)が重要視するトリム平均値が3.8%からどの程度低下しているかも注目。

 昨日のRBA理事会後に行われたブロックRBA総裁も会見で、8月CPIは3%を下回る予測と述べていた。ブロック総裁は昨日も月次CPIは振れが大きいことを指摘したように、四半期毎のCPIと比較すると市場の反応は限定的になるものの、インフレ率が予想より鈍化していた場合は、RBAの利下げ予想が来年から年末へと早まる可能性もある。逆にインフレ率が予想よりも加速した場合は、昨日のRBA理事会で「インフレが持続的に目標に戻るのは2026年と見込む」との見解を示したように、今後も比較的長期にわたり引き締め政策を継続していくことになりそうだ。

(松井)
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