東京為替見通し=ドル円、本邦通貨当局の円安抑制措置に要警戒か

 19日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、日銀の慎重な利上げスタンス、良好な米経済指標、米長期金利上昇などから、157.81円まで上昇した。ユーロドルは米長期金利の上昇に伴うユーロ売り・ドル買いで1.0355ドル付近まで下押しした。ユーロ円は163.80円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、18日のパウエルFRB議長のタカ派的な利下げと19日の植田日銀総裁のハト派的な利上げ見送りを受けて続伸が予想される中、本邦通貨当局が円安抑制に乗り出す水準を見極めていく展開となる。

 米連邦公開市場委員会(FOMC)のドット・プロット(金利予測分布図)では、来年の利下げ回数が2回程度(4.25-50%⇒3.75-4.00%)であることが示唆された。
 植田日銀総裁は、追加利上げの判断には来年1月30日のトランプ次期米大統領の就任後の米国の政策や3月の春季労使交渉の賃上げ動向などでの「1ノッチ(段階)」が欲しいとのことで、追加利上げの時期が3月以降になる可能性、すなわち、「時間的余裕」があることが示唆された。

 今週の日・米金融政策決定会合は、ドル高・円安に拍車をかけることになったが、上値を抑える要因としては、トランプ次期米大統領による円安を牽制する発言や本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性などに警戒しておきたい。

 8時30分に発表される11月全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く総合)は、前年比+2.6%と予想されており、10月の同比+2.3%からの上昇が見込まれている。先行指標である11月のコア東京都区部CPIは、政府の電気・ガス代への補助金が縮小してエネルギー価格が物価を押し上げたことで3カ月ぶりに伸び率が拡大していた。

 植田日銀総裁が利上げの条件として賃金動向を挙げていることで、11月コアCPIが予想通りに上昇していても市場への影響は軽微だと思われる。しかし、総裁は、現在の実質金利は極めて低い水準にあるとの認識を示し、今後、日銀の経済・物価見通しが実現していけば、それに応じて利上げを行い、金融緩和度合いを調整していく、とも述べていた。コアCPIが前年比+2.6%程度ならば、実質政策金利も実質10年債利回りもマイナスのままであり、円・キャリートレードの環境が再び整うことになる。

 植田日銀総裁は、7月の利上げの背景として、輸入物価指数を上昇させる円安の抑制を挙げていたが、昨日は、「輸入物価が上がっていないから円安を気にしていない」と述べていた。石破首相は「現時点ではデフレ脱却には至っていない」と述べていたが、政府・日銀のアコードに沿って、植田日銀総裁も忖度せざるを得ないのかもしれない。

 また、本日は、来年3月までの米国政府予算を手当てする「つなぎ予算案」の採決期限となっているが、トランプ次期米大統領が共和党議員に反対するように促したことで、成立の見込みはなくなっているらしい。「つなぎ予算案」が成立しなければ、クリスマスに向けて政府機関が一部閉鎖される可能性が高まることになり、米国債格下げの可能性を高めることで、関連ヘッドラインに警戒しておきたい。



(山下)
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