東京為替見通し=円買い・ドル売りの流れの中で迎える要人発言に注目

 5日のニューヨーク外国為替市場でドル円はまず、1月ADP全米雇用報告が予想を上回ったことから一時153.21円付近まで下げ渋り。しかし、1月米ISM非製造業指数が予想を下回ると152.12円と昨年12月12日以来の安値を更新した。ユーロドルは米10年債利回りが4.40%付近まで低下したほか、米ISM非製造業指数の下振れもユーロ買い・ドル売りを促し、一時1.0442ドルと日通し高値を更新した。

 本日の東京市場では、ドル円は田村日銀審議委員の発言機会に注意しつつも、下値が意識されやすい展開となるか。

 一昨日に植田日銀総裁が「デフレではなくインフレの状態にある」と発言したほか、昨日は赤沢経済再生相が「足もとはインフレの状態という認識、植田総裁と齟齬ない」と述べた。一連の発言を受け、政府によるデフレ脱却宣言と共に日銀の早期利上げが意識され、円が買われている。そうした中、本日の田村日銀審議委員の発言内容には否応なく注目が集まる。

 田村委員は、今年1月の日銀会合で利上げに賛成し、昨年12月には委員の中で唯一利上げを提案(反対多数で否決)するなど、市場ではタカ派的とみなされている。市場の予想通りタカ派的な内容となれば、昨日一時1.295%と2011年4月以来の水準に上昇した新発10年物国債利回りにさらなる上昇圧力が掛かると共に、円買い圧力が一段と強まるだろう。

 しかし、ドル円は今月に入り高値から4円近く下落している点を踏まえると、高まった日銀の早期利上げ期待を鎮めるような内容だと買い戻しを誘うこともあり得る。市場が不安定になっているだけに、発言内容には神経質な展開となることも考えられる。

 テクニカル面でも、ドル円は日足一目均衡表で三役陰転が点灯したほか、前週からわずかに低下傾向となっている200日移動平均線(本日は152.80円付近)を下抜いている。このため、下押す材料に反応しやすい地合いとなっている点には注意したい。

 また、今月のドル円の下落要因として、12月雇用動態調査(JOLTS)求人件数や1月ISM非製造業景況指数など弱めの結果が相次いだことによるドル売りの面も見逃せない。米10年債利回りが昨年12月以来の水準に低下していることを踏まえると、円売り局面でも上値抑制要因となるかもしれない。

 昨日はややタカ派とされる米リッチモンド連銀のバーキン総裁が「今年は依然として利下げに傾いている」「米国経済の過熱の兆候は見られない」などと発言したほか、ハト派とされる米シカゴ連銀のグールズビー総裁からは「インフレは低下し、2%の目標に近づいている」との発言が伝わっている。アジア時間には中立派とされるジェファーソン米連邦準備理事会(FRB)理事の講演が予定されており、金融政策に関する発言があれば材料視されるかもしれない。

 そのほか、材料としては一服感があるが、トランプ政権の関税を始めとした政策には引き続き気を付けたいところだ。

(川畑)
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