ロンドン為替見通し=欧州の緊急首脳会議に注目、米国案との隔たりがユーロの抑えに

 本日の欧州時間では、ウクライナ戦争に関する緊急首脳会議に注目が集まる。

 15日にミュンヘンで行われた安全保障会議でウクライナとロシア担当のケロッグ米特使は、欧州の停戦交渉の参加を拒否した。アメリカ・ファーストで米国の利益しか考えていないトランプ政権が、ウクライナとロシア間の和平交渉を進めようとしているのは、ウクライナにある鉱物資源獲得のためというのは明らか。

 そもそも、ロシアがウクライナを侵攻したドネツクとルガンスクは、ウクライナ全体で12兆ドルの価値があるとされる鉱物資源の7兆ドル分を占めると見られている。この鉱物資源をロシアにだけ占有されることを避け、米国もその利益を得ようとしている。

 米露でウクライナの分割案が浮上しているが、欧州圏にとってはロシアの侵攻は自国の主権にも影響を与えることで、米国と考え方に大きな隔たりがある。米国当局がリヤドでロシア当局と停戦に関する予備協議を開始する前に、欧州やウクライナは米国とロシアによるウクライナ分割の可能性に対する警告を直接伝える必要がある。

 これまでは、欧州と米国とは北大西洋条約機構(NATO)の一員として防衛面でも協力姿勢を保ち、現時点でも米国の意向をある程度組んでいたが、NATOも一枚岩ではいかなくなっている。週末のテレグラフ紙でスターマー英首相は「平和維持のためウクライナに英国軍を派遣する用意がある」と述べ、欧州圏の立場はロシアに譲歩する可能性が少ない。

 欧州の現政権と米政権の溝が深まりも懸念材料。トランプ政権の中枢を担うイーロン・マスク氏が英国の現労働政権を批判、バンス米副大統領は独総選挙を前に、移民排斥を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への実質的な支持を表明した。このような状況では、ウクライナとロシアへの停戦期待が急速に萎む可能性もあり、これまで買われていたユーロの上値が抑えられることもありそうだ。

 なお本日は12月ユーロ圏貿易収支が発表予定だが、こちらは相場インパクトは弱そうだ。ほか、ナーゲル独連銀総裁の講演が欧州昼頃に予定されている。

・想定レンジ上限
 ユーロドル:1月27日につけた年初来高値1.0533ドルや日足一目均衡表・雲の上限1.0558ドル。
 
・想定レンジ下限
 ユーロドル:14日安値1.0447ドル。その下は日足一目均衡表・転換線1.0397ドル。


(松井)
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