NY為替見通し=関税の影響を見定める展開に、月末・年度末SPOT応当日で神経質な動きか

 本日のNY時間は、トランプ米大統領が日本時間早朝に、米国外で生産された自動車に25%の関税を課すことを決定したことで、この影響がNY株式・債券市場にどの程度影響を与えるかを見定める必要がある。ただし、自動車関税発表直後はリスク回避的な動きを見せたものの、アジア市場では円買いの勢いが大きくはなく、欧州入り後は円安が進んでいる。本日のスポット応当日が月末・期末・年度末の31日あたることで、新年度になるまでは特殊玉が多く散見され、教科書通りの動きにはならないことを示しているとも言えそうだ。

 トランプ大統領の脅し(現地報道もディール=dealではなく、脅し=threatと表現)はエスカレートし、カナダや欧州連合(EU)と協力する場合には、更なる関税の引き上げにも言及している。自動車だけでなく基幹部品に対する関税も含まれ、日本や欧州、韓国などの自動車関連業への影響は避けられず、メキシコや南アフリカなど各国の自動車メーカーの工場が多い国への影響も甚大になる。領の脅しに各国が応じるのは難しく、関税問題は袋小路に陥る可能性もありそうだ。

 しかしながら、トランプ大統領の思惑通りに、自動車産業の生産が米国に戻るのは難しいだろう。例えば、米国の自動車産業の街として知られるデトロイトがあるミシガン州の最低賃金は時給12.48ドル(150円換算で約1870円)。一方米国への自動車輸出の拠点が多いメキシコの時給は米国に近い北部地域で46.86ペソ(7.4円換算で347円)、国全体の時給は31.12ペソ(230円)と、人件費だけでも大きな開きがある。高賃金の米国に工場を移転し、建設費等や時間を考えるとコスト面でも容易ではない。しかも、朝令暮改を繰り返すトランプ米大統領の発言で、その都度生産拠点を変更すると無駄な浪費にもなりかねない。しかも、移転を考えている間に中間選挙で共和党が敗北し、一期しかないトランプ政権がレームダック化することの方が早いかもしれない。よって、G7各国の中でカナダや欧州は米国に対抗した関税を課すことや、米国以外の取引先拡大を目指すのはうなずける。その一方で日本は強硬手段に出ない可能性が高く、その場合は政府主導のもので米国の自動車産業を援助するかたちで、円安の流れを変えるような協調姿勢を示し、関税回避策とするリスクがあることには警戒しておきたい。

 本日発表される米国の経済指標では、10-12月期米国内総生産(GDP)、個人消費などがあるが、いずれも確定値のため、速報値より余程開きがない限りは市場の反応は限られるだろう。よって、同時に発表される前週分の新規失業保険申請件数及び失業保険継続受給者数への反応が敏感になるかもしれない。ただ、あくまでも市場の中心は米国の関税やウクライナ情勢など政治相場ということもあり、米経済指標への反応は短期的なものにしかならないかもしれない。

・想定レンジ上限
 ドル円の上値めどは、3月3日高値151.30円。その上は200日移動平均線151.67円。

・想定レンジ下限
 ドル円の下値は、昨日安値149.84円、その下は日足一目均衡表・転換線149.56円。


(松井)
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