東京為替見通し=ドル円、半導体関税への思惑や日米通商協議への警戒感で上下か

 11日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、予想を下回った3月米卸売物価指数(PPI)で142.22円付近まで下落後、レビット米ホワイトハウス報道官やコリンズ米ボストン連銀総裁の発言でダウ平均が上昇したことで144.20円付近まで買い戻された。ユーロドルは、欧州市場の高値1.1473ドルから、トリプル安(株安・債券安・通貨安)」を巻き戻す動きが広がり1.1277ドル付近まで下押しした。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米中貿易交渉への期待感や電子機器が「半導体関税」に分類されるとの報道などで強含む可能性はありそうだ。しかしながら、17日予定の日米通商協議への警戒感は残り、上値も限定的となるかもしれない。

 先週は、世界最大の経済大国で貿易赤字大国である米国が対中関税を145%に引き上げ、世界第2位の経済大国で世界最大の対米貿易黒字国である中国が、対米関税を125%に引き上げた。米中貿易戦争が勃発し、グローバル・リセッションへの警戒感が高まっている。

 しかし中国側が関税率125%を上限と示唆し、米国側も「トランプ米大統領は中国との取り引きに前向きな姿勢を示している」こと、電子機器などが「半導体関税」として発動延期との報道などを受けて、米中貿易交渉への期待感がやや高まっている。トランプ米大統領は、本日、「半導体関税」に関する説明をするとのことで要注目となる。

 ドル円の上値を抑える要因として、ベッセント米財務長官が17日の赤沢経済再生相との日米通商協議で、非関税障壁、補助金、そして「為替問題」などの協議を示唆していることが挙げられる。

 トランプ米政権の貿易赤字削減に向けた取り組みは、ミラン米CEA委員長が昨年秋に公表した「国際貿易システム再構築のためのユーザーガイド」に沿ったもの。第1弾に懲罰的関税を打ち出し、第2弾に貿易相手国が関税引き下げの見返りとしてドル高是正という通貨協定を受け入れる、というシナリオとなっている。

 4月8日時点でのIMM通貨先物の投機部門取組の円のネット買い持ちポジションは、147067枚と過去最大を更新した。ドル円が155円付近の時に、円の売り持ちから買い持ちに転換し、152円付近で過去最大規模に拡大し、4月8日の146円付近でも過去最大を更新している。

 低金利通貨である円の買い持ちポジションは、ネガティブ・キャリートレードとなるため、日々コストを支払い続けなければならず、短期的な戦術である。ただし、トランプ米政権が日米貿易不均衡を是正するためのドル安・円高誘導策として、第1弾の関税発動後もポジションを堅持している背景には、第2弾としてのドル安誘導策への期待があるのかもしれない。

 ミラン米CEA委員長やベッセント米財務長官の二人のヘッジファンド業界出身者が目論んでいると噂されているのは、財政緩和と金融緩和を背景にしたドル安誘導策「マールアラーゴ合意」である。

 トランプ米大統領の執務室の壁には、尊敬するレーガン第40代米大統領の肖像画が飾られており、貿易赤字削減のための1985年の「プラザ合意」の顰に倣った「プラザ合意II」(=「マールアラーゴ合意」)を打ち出す可能性が警戒されている。

 ベッセント米財務長官が在籍していたソロス・ファンドでの指南役だったスタンレー・ドラッケンミラー氏は、1985年秋のプラザ合意ではドル円、1992年のポンド危機ではポンドを叩き落した人物であり、弟子でもあったベッセント米財務長官も、為替操作に長けている人物である。



(山下)
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