東京為替見通し=ドル高是正の発表無いがドルの上値は重いか、米トリプル安進行懸念

 昨日の海外市場でドル円は、「米国は米韓協議でウォン高に向けた対策を要求した」との一部報道を受けて、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議にあわせて開催される日米財務相会談や米関税措置を巡る3回目の日米交渉を前に、円安是正議論への思惑が高まり、円買い・ドル売りが先行し一時143.29円と7日以来の安値を更新した。ユーロドルは、低調な米20年債入札をきっかけに米トリプル安の様相がさらに強まると、一時1.1363ドルと日通し高値を更新した。

 本日の東京時間でドル円は、ドルの上値は限定的になりそうだ。日米財務相会談後に両財務省は、「前回の会談と同様に為替の水準については議論されなかった」「現時点でのドル円はファンダメンタルズを反映しているとの認識を再確認」「為替レートは市場で決定されるべきとの共通認識を再確認」などと声明で発表された。この発表を受けて、ドル円は144円台まで買い戻されている。ただ、市場では水面下でのドル高是正については話し合いが行われているという疑念が消えることはなく、買い戻しは限定的になると思われる。

 ドル高是正の思惑が続いているのは、他のアジア諸国に対してもドル高について話し合いが持たれている可能性が高いことだ。昨日も米国が米韓協議で「ウォン高に向けた対策を要求した」との報道が流れたが、それ以前にも韓国企画財政部の報道官が「米国との為替協議が行われたことを確認」と述べている。ただ。これらの報道が伝わる度に否定され、鄭仁教・韓国通商交渉本部長も「グリア米通商代表部(USTR)代表との協議で為替は取り上げられなかった」と述べている。市場では米国は日本、韓国、そして台湾などの一部アジア諸国と足並みをそろえてドル高是正を求め、同時に発表するまでは為替については正式な発表を控えているとの予想がある。よって、今回も為替についての発言は従来通りだったが、言葉を額面通りに受け止める市場参加者は少なく、ドル円の買い戻しは限られるだろう。

 また、ドルの上値を抑えるのは、米国で再びトリプル安を懸念した声が高まっていることが挙げられる。昨日は米東部時間午後1時に行われた20年債入札の低調な結果が、利回りをこの日の高値に押し上げるきっかけとなった。ただ、入札以外にもトランプ米大統領による大型の税制・歳出法案(トランプ氏曰く「big, beautiful bill」)が一両日中に下院で採決される可能性が高まっていることも、米債売りの背景にある。これまでは安全資産とみなされていた米債だが、米国の財政問題をさらに悪化させる可能性が高いことで、徐々に安全資産とはみなされなくなっている。一部ではダムの崩壊が始まっているとの指摘があり、本格的な米債売りがさらに始まるリスクがあることが、ドルの重しになりそうだ。

(松井)
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