東京為替見通し=本邦通貨当局の円安牽制、日本の8月貿易赤字、豪8月雇用統計などに要注目か

 14日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、日本政府・日銀が円安を食い止めるために円買い・ドル売り介入を行うのではないかとの警戒感から142.55円まで下落後、143.22円付近まで反発した。ユーロドルは、1ユーロ=1ドルのパリティ(等価)を挟んだ狭いレンジでの取引に終始した。ユーロ円は142.30円まで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、本邦通貨当局による円安抑制措置に警戒しながら、日本の8月の貿易赤字を見極める展開が予想される。

 昨日のドル円相場は、144.96円まで上昇したものの、145円に控えているノックアウトトリガーの防戦売りが上値を抑える展開となった。9月7日の145円を巡る攻防戦でも、上値は144.99円までだった。テクニカル分析ではダブル・トップ(144.99円・144.96円)を形成する可能性が出てきており、ネック・ライン141.51円割れには警戒しておきたい。

 昨日は、日銀が銀行の為替ディーラーなどに相場水準を尋ねる「レートチェック」を実施したことや鈴木財務相の発言「あらゆる手段の中には為替介入も含まれる。やるときは間髪入れずに瞬時にやる」などで、1998年以来のドル売り・円買い介入への警戒感が高まっている。

 最後のドル売り・円買い介入は、1998年6月に142円台で行われた日米協調介入で、金額は25億ドル程度だった。ドル円は日米協調介入を受けて136.02円まで下落した後、8月11日の高値147.66円まで再上昇して行き、ロシアのデフォルト(債務不履行)やLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の投資失敗を受けて、翌年の101.25円まで下落していった。

 本邦通貨当局による単独介入が成功するには、過去最大規模の介入金額、日銀の政策金利引き上げ、イールドカーブコントロール(YCC)の変動幅拡大や年限短縮などを組み合わせる必要があるのではないだろうか。

 9月の株安のリスクシナリオとしては、欧州の電力会社がヘッジ取引に伴う追加証拠金を1兆5000億ユーロ差し入れなければならないこと、米金利上昇やドル高によるドル建て債務国のデフォルトなどに警戒しておきたい。また、本日から開催される上海協力機構(SCO)の第22回首脳会議で予定されている中露首脳会談にも警戒しておきたい。

 8時50分に発表される8月貿易統計(通関ベース:平均為替レート@136.05円)では、上中旬の貿易赤字が1兆7364億円を記録していたことで、7月の1兆4368億円に続いて13カ月連続の貿易赤字が見込まれている。7月の輸入金額は前年同月比47.2%増の10兆1896億円と膨らみ、18カ月連続して増加し、5カ月連続で過去最大を記録した。8月も円安の進行を受けて過去最大を記録することが見込まれており、実需筋による円売り圧力の強さを確認することになる。8月の輸入物価指数(速報値)は、前年比+42.5%だったが、20%強が円安によるものだった。

 10時30分に発表される8月豪雇用統計の予想は、失業率が3.4%で7月の3.4%と変わらず、新規雇用者数が+3.5万人で7月の-4.09万人からの改善が見込まれている。先日の豪準備銀行(RBA)理事会では「今後数カ月の間に失業率がさらに低下し、その後、経済成長の鈍化に伴い、失業率はいくらか上昇する」と予想していた。本日は、RBAの予想通りに失業率が低下するか否かに注目したい。



(山下)
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